ランスvsこれのコトネちゃん

汚いやつだ、と思った。そういうのは嫌いじゃないけど。やっぱり元とはいえ悪の組織って言うくらいなんだから、バトルに負けた位でほいほい言うこと聞いちゃうのは良くないよね。うんうん。だから好き。
そういうのを屈伏させるのは、とても楽しいから大好き。基本的に、道端で出会ったトレーナーはバトルに負けたらちゃんとお金をくれちゃうから、こんな機会はないけど。これはすごく、ラッキーなんじゃない?
ああ、だめ。にやにやしちゃう。どうしよう、だって久しぶりなんだもの、こんなの。

「ロケット団はもうないんだし、大人しく逃げればよかったのに」

無意識のうちに口角が上がる。自分で言うのも何だけど、今のあたしは相当嫌な顔。目の前の綺麗な顔のお兄さんはきっととてつもない屈辱だろう。だってこんな子供にロケット団の再建を邪魔された上、今現在足蹴にされている、なんて。あーあ楽しい!悔しそうに唇を噛み締める大人ほど面白いものはないわ!
やっぱり頂点を足蹴にした自分は違うなあ、などと傲り高ぶっているから忘れていた。

「ランスさん。悔しいですか?悔しいですよね。だーってこんな子供に見下されて、踏みつけられてるんだもん。綺麗な顔も地面に擦り付けちゃって、」

さ。と言い切ることは出来なかった。彼の屈辱に濡れた瞳を見ようと屈み込んだ瞬間、何が起きたか分からないまま、背中に痛みが走った。

「っい、た」

状況を瞬時に理解することは出来なかったけれど、何かが起きたことは明らかで。直ぐに腰の愛しい仲間に手を伸ばしたけれど、もう遅かった。

「探し物は、これですか?」

聞こえた声は、真上から。起き上がろうとしても、腹部の重みに邪魔されて不可能だった。嫌な予感しかしない中、頭だけを動かして視線を上へ動かせば、先程まであたしの足の下にいた彼が、いやらしい笑みを称えて此方を見下ろしていた。手には愛しいあたしの仲間達。彼はそれをホルダーに付けたまま、遠くへと投げ捨てた。

「…、な、んの真似」
「いえ、別に。小生意気な餓鬼に、お仕置きでもしようかと思いまして」
「、ぁ」
「あなたのことですよ。コトネ」

なにこれ、おかしい。おかしいでしょ?こんなの。だって、あたしは頂点であるあの人まで屈伏させたことがあるんだから。こんな、こんなロケット団の残党なんかに、あり得ない。
あり得、ない、のに。
そういえばあたしは、立派な子供だった。

「いた…あ、うあ、や」

手を踏みつけられ、痛みにぎりり、と歯を食い縛る。それなのに彼の手は無遠慮にあたしの首筋をなぞる。今にも絞め殺されるんじゃないかという恐怖の中、動かせない体。言葉を発せない唇。震える体は、恐怖からか快感からか。ぶるり。ぞくり。

ああ、あ、あ。こわいこわいこわいこわい。知らない。こんなの知らない。だってあたしはいつだって有利な立ち位置。こんなことになるはずないもの。知らないに決まってる。あたしは無知だ。だからこわい。助けを求めたら助けてもらえる?謝ったら許してもらえる?
たすけて、たすけてたすけてたすけて。

(だれか、)

「、ごめ、なさ」

あたしが屈辱の中、どうにか紡いだ言葉を聞いて、彼は薄く笑うと口を開く。

「御愁傷様」

ぼとり、と大きく見開いた瞳から涙が落ちたのと同時に、彼の唇が降ってきて、そして、。
暗闇に、のま、れ、た。

―――
タイトル→joy
まだ悪をよく分かってないコトネちゃんのはなし。
ドSに踏みにじられるドSが好きすぎて困ります
(091210)

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