幼少緑赤緑

気付いたら一緒にいた。出会ったのはいつだったっけ?覚えていないくらいずっと前。そう、気付いた時には、レッドは俺の隣にいたのだ。
今だって人ん家だってのに遠慮なくベッドに寝っころがってコントローラを握っている。…あれ、おかしくないか?何で俺律儀に床に座ってるんだ。ここ俺の家だよな?とまあ、こんな感じにレッドはいつの間にやら俺の家に、ひいては俺の生活に溶け込んでいた。

「ねえ、お腹すいた」
「あー?勝手に探せよ」
「めんどくさいからとって」
「俺はお前の世話係じゃねえ」
「……けち」

さっきまで握っていたせいか少し汗ばんだコントローラを置いたまま、レッドはいかにも面倒くさそうにゆらゆらと立ち上がり階段を降りて行った。俺は背を向けた状態のため想像でしかないが、多分棚を漁っているんだろう。ポテチとかクッキーとかその辺なら多分そろってる。レッドもうちの棚を漁るのなんて日常茶飯事だから、どこに何があるかくらい把握しているし。そんなに時間はかからないだろうと思う、そんな俺の目に映ったラスボス寸前のポーズ画面。
…そうしてなんとなく、仕返ししてやろうと目論んでみたりとか。何に対する仕返しかと聞かれても困るけど、まあ何と言うか、いつもの憂さ晴らしみたいなかんじだ。指がゆっくりコントローラに伸びる。ボタンに触れ、押す直前、突然後ろから強い力で引かれ、背中から床に激突した。

「痛ってえー!」

誰のせいかなんてのは、考えなくたって明らかだ。あいつしかいない。

「何すんだバカ!いっつ…!」
「グリーンがリセットしようとしたのが悪い。僕のせいじゃないし」
「あーあーそりゃ悪かったな」
「…謝り方うざい」

レッドは、むっとした表情で手に持った大量のスナック菓子を床にばら蒔く。そうして自身も床に座り込んだ。ちょうど俺の倒れている頭の上だ。レッドの真っ赤な双眸が俺の視線と交わる。…見下されている気しかしない。
そのままレッドはポテチの袋をばり、と開け、もそもそと食べ始めた。おい待て。なんか粉ってか欠片降ってくんだけど。うっぜ!
我慢ならず起き上がろうとしたけれど、それより良いことを思い付いたので実行に移すことにする。ポテチに心が移っているであろうレッドを横目に、ぱっと床のコントローラへ手を伸ばし、リセットを押した。時間にして1秒もかかってないんじゃないかという機敏な動き。レッドから聞こえていたポテチを咀嚼するばりばりという音はぴたりと止まった。動揺しているであろうレッドに、無意識に口角が上がる。

「…へへ、俺の勝ちだな。悔しいだろー」

寝転んだ状態のまま得意そうに言えば、レッドからは返事がなかった。あれ?おかしいな。まさか本気で怒った、とか?

「……、おいレッ」

心配になって開いた口は、いきなりレッドのそれにより塞がれた。何が起こったかは理解不能。何の反応も出てこない。ただ、状況を理解しようとするだけで精一杯だった。

1、2、3。ゆっくり離れるレッドと俺。寝転んだままの俺を覗き込むようにしているレッドの表情はいつも通りで、今のは夢だったんじゃないかと思ってしまうほど。ぱくぱくと魚のように、何かを言おうとするのに何も出てこない真っ赤な俺を前に、レッドはようやく口を開いた。

「僕の勝ち」

そうしてほんの少し笑い、また膝のポテチへと手を伸ばした。起き上がることすら忘れた俺は、レッドの耳がほんの少しだけ赤いことに気付くことはなかった。

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タイトル→joy
(091205)

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