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バレンタイン


バレンタイン当日
街はそわそわしていて、普段の様子とは違っていた

しかし、それは街にのみ言えることではなく、人物にしてもそうだった

「あら、ポトフ様は?」

ポトフがいつもならまだ布団の中でごろごろしている午前10時
だが、そこにはポトフの姿はなく、脱ぎ散らかしたパジャマだけが置いてある

「あいつならさっき紙袋持って出てったぞ」

真見ゆの問いにサングラスが答える
真見ゆはあの子に会いに行ったのですわね、と少し気分を暗くした



―――――――



一方、その頃ポトフは、2人のお決まりの場所、川近くの土手で、友達を待っていた
るんるんとした気持ちが、カチューシャに伝わって
ふわふわとカチューシャも揺れている

「おはよう」

急に後ろから声がした
振り返ってみるとそこには白く儚い雰囲気の少女がいた
黒いリボンと白いワンピースが風に揺れている
ポトフは顔を輝かして、おはよっ、と言った


「ポトフ、嬉しそう」

宵がポトフを見つめながら言った
ポトフはえへへ〜、と照れて頭をかきながら、言った

「宵に会えたからね!」


すると宵も心なしか微笑んでいるようだった
ポトフは更に嬉しくなる


「今日はね〜、とっても良いものを持ってきたんだ〜」


ジャ〜ン!!!


と取り出したのは、真見ゆに手伝ってもらって綺麗にラッピングされたハートの箱

「それは?」


宵は小首を傾げた
ポトフはバレンタインチョコだよ! と言ってにっこり笑った
そして、ひらめいた


「宵は好きな人とかいないの!?」

ポトフが身を乗り出して尋ねる
宵はしばらく口元に指を添えて沈黙したのち

「…いる」

と答えた
ポトフは、キャーッ! と絶叫すると宵の肩をガシッと掴んだ

「よっし、じゃあチョコつくろっ!!!」

そう言うと宵の手を掴んでそのまま駆け出した



―――――――



「たっだいま〜!!!」

ポトフの大声が室内に響いた
ここは、ポトフの暮らすポケモンジャー事務所
男共3人はロビーに集まり七並べの真っ只中だった

突然大声と共に入ってきたポトフに視線が集中する

「…おじゃまします」

と、後ろから宵が少し遠慮がちに入ってくると、男共はうわっと息を呑んだ

(あんなにも可愛い子がポトフの友達!?)

「台所使うから!!! 入って来ないでね!」

と念を押した後に、宵の手を引いて台所へ向かっていった


「…不思議なことがあるもんだな」

とポトフらの後ろ姿を見送りながらサングラスが呟くと、他の2人は盛大に頷いた



―――――――



台所に籠もってから約3時間
ちょうどおやつの時間になった頃
ようやくオーブンからクッキーの焼けた音がした
ここまで来るのに大分苦戦してしまったが、なんだかいい匂いもしてくるし、成功の予感


「いい、開けるよ?」

ポトフは宵に尋ねる
宵は黙ってゆっくりと頷いた

オーブンの取っ手に手をかけて、開く


「うわぁ!!!」

中には綺麗に焼けたクッキー達が美味しそうに輝いていた


「やった〜!!!!! やったね、宵!」

そう言ってはしゃぎながら宵に抱き付く
宵も少しだけ口角を上げた



クッキーを取り出して、パットの上で冷ましたのちに、買ってきた箱に入れ、リボンでラッピングする


「宵! バレンタインチョコっていうのは、作ってラッピングしたら終わりって訳じゃないの…」

ポトフは語気を強めて言った

「好きな人に渡してこそ! バレンタインチョコなの!!!」

宵は、納得したようで、頷いた
それを見て、さ! 渡しにいこー!!、と駆け出しそうな勢いのポトフ
の、そでを宵は掴んだ

「ん? 宵どうしたの?」


と言うポトフにスッとラッピングしたチョコを差し出す

「ハッピーバレンタイン」

宵は囁くようにポトフに言った
ポトフは2、3回瞬きをすると、自身を指差し、頭上にクエスチョンマークを浮かべた

宵はこくっと頷いた


「…あ、ありがとっ」

照れながら、ポトフは可愛くラッピングされた箱を受け取った

すると、宵がきゅっとポトフに抱き付いた

「…ポトフは大好きな友達だ」

ポツリと呟くと、ポトフの胸に顔をうずめた
ポトフが顔を真っ赤にしたことは言うまでもない





しばらくしてから、2人は2人で作ったチョコを2人で食べた

2人が出会った、あの河原で







恋人たちだけでなく、友達たちにも、幸せなバレンタインを...


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