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環くんちのご飯事情


ことことこと
たんたんたたん
じゅーじゅーじゅわー



ここは、円さんや巡ちゃん、ユルビス君に環君も住んでいる駅員さんたち専用のアパート
ライモンシティの片隅にあるわりとこじんまりとした建物だ
こじんまりとしてはいるが、結構住みやすく、住民たちからの評判もいい

そして、“ここ”についてもっと詳しく言うならば、そのアパートの一室で、環君の住んでいる部屋である
もっともっと詳しく言うならば、その環君が住んでいる部屋の中のキッチン
そこから、あのようなリズミカルな音が聞こえてきているのだ

そして、ここの家主である環は今、バトルサブウェイの勝敗記録について書斎でまとめている
・・・では、一体誰がキッチンに居るのか?





「たーまきくん、料理出来たよ〜!!!」

キッチンからひょこっと出てきたのは青地に黄色いラインの入った大きなリボンをした女の子だ
髪はベリーショートだけど、その大きなリボンと可愛らしい顔立ちからか、女の子らしさに溢れている

「・・ここまでやりきったらいくー」

環は書類に目を落としたまま言った
その書類にはあと30件ほどのバトル記録が残っている

しかし、急にぐいっと環の顔が真上を向いた
環の首がごきゅっと不吉な音を立てる

「ダメ―、そんなこと言っていっつも環君こないじゃん・・・って何その顔っ!!!」

両頬を挟まれ強制的に上を向かされている環の顔は、ぶちゃいくそのものだった
プラグはぱっと両手を離すと、お腹を抱えてしゃがみこんだ

くつくつくっくつくつくつくっつくつく

「おい・・・」

環は不吉な音のなった首の後ろを擦りながらプラグに向って言った

「わ、笑ってない・・笑ってないよ・・・ぷ」

急いで口に手を当てるプラグ
だんだんと顔が赤くなっていく

・・・っぷ、あはははあはあははあははははははっ

抑えきれなくなってプラグは思いっきり笑い出した

「・・・やっぱり、笑ってんじゃん!」

この子はプラグ、環の古い友達である



―――――――



「お前ってホント終始笑ってるよなー・・・」

環はしばらくしてなんとか笑いの収まったプラグと共にキッチンに向かう

「環君こっち向かないで・・ぷくく」

「ほんとどんだけなんだよ!」

プラグは口を両手で押さえて、環の後ろを行く

「・・・ま、でも俺プラグの笑った顔好きだけどな」

見てるだけで元気貰えるし、疲れも飛んでく感じするし
などなど言いながら、テーブルに座る

プラグは、キッチンの戸口で立ち止まっていた
しかし、パッと手を下ろすと、にっこり明るい透き通った笑顔を浮かべて言った

「あたしも環君のこと好きだよ!!!」

面白いし、なんだかんだ言って優しいし
などなど言いながら、テーブルに座る



『友達としてだけどな!』
『友達としてだけどね!』




お互い椅子に座って向き合ってから、合言葉のように声を揃えた


男女の友情なんて、絶対に成立しないなんて誰かが言ってたけれど、2人の間にあるものはまぎれもなく友情だから、俺もプラグもそんなこと絶対に信じない
今までもこれからも、よろしくな・・・プラグ












+α


「これ何?チャーハン?」

環は作ってある料理をみて言った
毎度のことだが、プラグのご飯は見た目と中身が一致しない
この前は、見た目はグラタンだったのに味は五目御飯っぽいものだった
ぽい、と言うのはそれに一番近いが、それでもないということで・・・
プラグの料理は毎回未知の世界への冒険である、と言っても過言ではない


プラグは口を若干とがらせた

「ぶー、ちがうよーポゴロムリンだよー」

もー環君ってばわかってないなー・・と呟きながら首を左右に振る

(・・・ポゴロムリンってなんだよ!実在してんのか!?俺が知らないだけなのか!?)

と内心では激しくつっこみむ
プラグの言う料理名は、いつも聞きなれないものばかりで、実在しているのかどうかも怪しいくらいだ
一度、ほんとに存在しているものなのか調べてみようと試みたが、それらしき名前は一切見つからなかった
しかし、本当のところは未だに不明である


取り敢えず手を合わせ、頂きます、と二人で声を揃えて言うと、スプーンで見た目はまさにノーマルチャーハンなポゴロムリンなるものを口に運ぶ

「どう?おいしい?」

プラグは左右に揺れながら環の様子をうかがっている
環の反応を楽しそうに待っている

(一体これはなんなんだ、この食感・・こんにゃく?味は俺好みで結構辛い・・・けどまろやかでとってもおいしい・・・この今まで食べたことのないような味・・・・これは、これはまさに・・・)


環はスプーンを持ったまま、ガタッと立ち上がった

「ッポ・・・ポゴロムリンだっ!!!!!!!」















あはっ

あはははは


「何その顔―、環君おもしろーい!!!」

爆笑のプラグは、毎回環の普段の澄ました様子とはかけ離れた、この反応を楽しみに料理を作っているのである






「ご馳走様でした」

環は手を合わせて言った

「おそまつさまでしたー」

プラグは食器を取って流しに持っていくとその使用済みの食器を洗いだした

「ほんと、いいって、食器洗いくらいは俺出来るって」

と言って食器を洗うプラグに言う

「だめだよ、環君はお仕事しなよ!片づけまでが料理なのー」

わかる? というと、ほら早く仕事仕事っ! と環を書斎に押し込んだ
環は自分のデスクに座ると、書類に目を落とし、盛大にため息をついた

キッチンからはプラグの楽しそうな歌声が聞こえる




男女の友情なんて、絶対に成立しないなんて誰かが言ってたけれど、確かにこんないいやつと友達で居続けるなんて難しいかもな・・・





・・・もし俺が友達としてじゃなく、プラグのことを好きだって言っても、







プラグ・・お前はその後も俺と一緒に居てくれますか・・・?







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