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お茶目会!


とある住宅街の建物の一室
一人暮らし向きの部屋
しかし、そこには住人が2人いた…

“いた”というのは少し違うかもしれない
正確に言うと2人になった…



「軌銃ー、ハラへったー」

その家の主の空螺は、もう1人の住人に呼びかけた
すると、呼ばれた娘はゆっくりと首だけで振り返る

「…さっきも食べただろうに」

しかし、立ち上がると彼女は冷蔵庫の中身を確認した

(…ポフィンでも作るか)


彼女…、軌銃は手際よく料理の準備を始めた



―――――――



歩き慣れていない街の小道を、特徴的な黒い帽子を被った女の子と寝ぐせ頭の男の子が行く

行きたい場所や決まった目標が有るわけではない
ただ、暇つぶし程度にふらりと歩いている


「!」


急に女の子は道の途中で立ち止まった
赤い瞳で建物の一室を見ている

「どうしたんだよ?夜」

女の子、つまり夜一が立ち止まったことに気がついて男の子も立ち止まり、夜一の方を向く


「なんだか良い匂いがすると思わない?」


女の子は見つめていた部屋を指差して男の子、つまり赤丸に言った

正直赤丸にはわからない
季節は冬、それなりに寒いし、どこも窓なんて開けちゃいない…


「ポフィン…かなぁ?」

「さあ…」

くるっと赤丸をきらきらした目で見て夜一は言った

「丸っ行こうよっ!!!」


こうなってしまっては、どうにもならないのを赤丸はよぅく知っていた



―――――――



「美味しそうだなー…、ほんと軌銃は料理うめえな」

軌銃の作ってくれた綺麗なポフィンを見ながら、空螺は呟く

「別に、普通だと思うけど…」

ポフィンを籠の中に移すと、少し俯きがちに彼女は言った


彼はさっと籠に手を伸ばす
何気なく窓の方に目をやった







???


(人がいる?)


籠の方に手を伸ばしたまま静止している空螺を不審に思い、軌銃も振り返る



「こんにちはー、入れて下さいっ☆」

笑顔で手を振る赤目の女の子と、その後ろに眠そうな顔と寝ぐせ頭で立っている男の子


((なんで窓に!?))


と不思議に思ったものの、そこに居られるのも迷惑なので、空螺は2人を部屋の中に入れた


「やっぱりぃー!!!」

その女の子は挨拶もそこそこにポフィンに向かっていった

男の子も、その女の子の後ろをゆっくりとついて行く


「夜、お前どんな鼻してんだよ…」

男の子はその女の子に若干呆れているようだった


「…貴方達、一体何者?」


軌銃はいきなり現れた2人を低めの声音で威嚇した

窓際に残された空螺も2人を警戒している様子だ

男の子の方は少しだけ、空気が変わった
しかし、女の子はさっきと変わらない調子でニコニコと挨拶した


「あ、ごめんなさい!あたし夜一、こっちは赤丸!このポフィンスッゴく美味しそうだねっ!!」

赤丸はすっと力を抜いて、頭を軽く下げた

夜一はずいっと、軌銃の方に寄ると、ガシッと両手で軌銃の手を包んだ

「下の通りを歩いてたんだけどね、すんごく良い匂いがしてっ!!!それで、来たの」

ふにゃっと笑った夜一の頭の中は、美味しそうな匂いを放ち続けているポフィンが占領していた


「食べてもいいですか?」



3人の視線が、軌銃に集まった



―――――――



暗い路地裏、青い髪を風になびかせながら、その青年は足を早める

(…つけられてるな)


近くの曲がり角でさっと曲がり、身を潜める
しかし、相手は追っては来ない
嫌な緊張感が路地裏のその空間を覆う







(…長期戦になりそうだな)

青年がふぅと息をついたときに、追っていた男が動いた


「ちょっと、聞きたいことがあるんだ…、害を加えるつもりはない」


その男、ガブは情報を得るために、この地まで仲間を連れてきたのだった
真白の牛耳る白色の都内部を少しでも知るために…



路地裏には沈黙が立ち込める



青年は、不意に背後に何らかの気配を感じて振り返る
金髪の少女がいた
少女の手には光がまとわりついていた


「っ!!」

すんでのところで、その青年はかわす、しかし、路地の方に飛び出してしまった

路地に立っていたガブは、急に飛び出してきた青年に驚いているようだった


続いて少女が再び青年に襲いかかろうとする
青年も体制を持ち直し、応戦するようだった


「やめろっ!光っ!!!」


ガブの声に、勢いよく突っ込んでいた少女は、ピタリと止まった

「はい、わかりました」


言うとその場に直立して、動かなくなった
急に襲われたのにも関わらず、青年は無傷なようだった

光にどうしてここに居るんだ?とガブは尋ねようとした
しかし、青年の言葉で後回しにする事を決めた


「…何が知りたいの?」

その青年、情報屋クラヴィンはガブを見て言った


「教えてくれるのか?」

ガブは意外そうに言った

「タダでではないけどね…」

言いながらクラヴィンは背中を壁に預けた
長くやってると、交渉時間の長短がわかってくる

ガブはガブで、やっぱり花束について来て貰うんだったと少し後悔していた
クラヴィンは女には甘いと聞いていたのに…

しかし、教えて貰えるんならありがたい
彼は最近闇市を壊滅させたと聞く
そこにはきっと、真白の知り合いもいたに違いない


「闇市について聞かせてほしい」


クラヴィンはガブの言葉に表情を暗くしたが、わずかすぎて、会ったばかりの2人には、気付くことが出来なかった


―――――――



「…わかった、わかったから手を離せ」

軌銃は夜一の行動に、調子が狂ったようだった


「じゃあ、食べていいの!?」

もうポフィンにしか目の向いていない夜一は、首を縦に振る軌銃を見て、ヤッターとポフィンに向かっていく
それを見て、空螺も気を取り直したようで、籠の方へ行きポフィンを手に取る

「…あんたらの名前は何?」

軌銃らに向かって、赤丸は言った


「私は軌銃」

赤丸は、もう1人を向く

「俺は……空…螺っ」

ポフィンを口に詰め込みながら言う

「キジューちゃん料理上手だねっ!ものすごく美味しいよ!!!」

赤丸もっ!といった感じで、手で招く

赤丸もトロトロといって、ポフィンを口に入れる

「んー、んめぇ」


軌銃は少し狼狽えながらも、

「ほ、誉めてもなにもでないぞっ」


と言った、心なしか嬉しそうだった


その後もポフィンを食べながら4人は、他愛もない話をした


4人は会ったばかりだか、不思議と話が途切れることはなかった



―――――――



空螺たちの住む部屋の戸口に、クラヴィンを先頭にして、ガブ、光と立っていた

中からは楽しそうな、声がする


『実際に闇市に居た子の所に行きたい』



そう言ったのはガブだった、話を聞く限り、相当に辛く、悲しかっただろう彼女を、話を聞くことで、追い詰めることになったとしても…
かの闇市で行われていたようなことを、こちらも止めねばならなかった

しかし、扉の向こうから聞こえる楽しそうな声は何だ?

彼女は、あの凄惨な場所に居たことを乗り越えて、いや、乗り越えようとしている
少しずつでも…

扉の取っ手に手を伸ばしたクラヴィンをガブは止めた


「…やっぱり、止めた…色々な情報をありがとう」


クラヴィンは安堵したかのように、幾分か優しい笑みを浮かべた



ガチャッ



と、触ってもいないのに扉が勝手に開いた
そこには、赤丸と空螺が居た

「やっぱり、ガブの兄貴!!」

「クラヴィン、てめぇこんなとこで何してんだ?」


嬉しそうな赤丸と、怪訝な顔をした空螺


軌銃と仲良く話していた夜一が、トタトタと来て、ガブとクラヴィンの手を掴んだ


「ちょうどいいよ!流石ガブにぃっ!!」

と、2人を連れて行く
光さんも来て下さい!
と手招き


「ちょ、ちょうどいい?」


引っ張られながら、ガブが聞く

(そして、その前になんでお前らがここに居るんだ?)


赤丸はにっとして言った

「4人でUNOしてたんだっ」

「そうそう、キーちゃんが物凄い強いのよ」


興奮気味の夜一

(キーちゃん?)「夜一、キーちゃんは止めて」

軌銃が恥ずかしそうに言ったが、嫌そうには見えなかった


(軌銃をキーちゃんか…)

少し口が緩んだクラヴィン
それを空螺は見逃さなかった

「何ニヤついてんだ、気持ちわりぃ」


「…」



―――――――



7人で、テーブルを囲んでUNOをする



お菓子には美味しいポフィン



わいわいがやがやと楽しく過ごす





きっとこの出会いは、
ここにいる全ての人にとって、
かけがえのないものになる



そう願う









―――おまけ―――

「噂通りでとっても素敵なストーンブレスレットね」

花束は、腕に着けた水色のブレスレットを、惚れ惚れと見つめながら言った

「ありがとうございます」

そのブレスレットを作った青年、ルーンは人の良い微笑みを浮かべた

「どうかしら?」

と腕をかかげて左助に尋ねる

「とても似合ってます、姉さん」

花束は嬉しげだった
左助も幸せそうに優しく微笑んだ

「…お節介かと思いましたが」

ルーンがおずおずと2人に声をかけた







「左助さん、貴方の分も同じモチーフで作らせて頂きました」

ルーンは、花束のブレスレットとは少し違うが、雰囲気のよく似たブレスレットを左助に差し出した



戸惑う左助の代わりに、花束が受け取ると左助の腕に着けた


「お揃いね」



花束はそう言って微笑んだ

左助は顔が真っ赤だった

ルーンはそんな2人を微笑ましく見つめていた





宝物、ふえたね

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