「幸村様!早くしないと、あっという間に並んじゃうんですから!」
開校記念日で学校が休みである幸村は、
くのいちとともに通称夢の国と呼ばれているる大型テーマパークへ来ていた。
くのいちが以前から行きたがっていた所で、
ちょうど良い所に兄が福引きで当ててきたペアチケットを
幸村に譲ったのがきっかけである。
開園時間前に到着しておこうと、
朝早くに家を出たため電車の中
自分の肩に頭を乗せて眠るくのいちの横で、
幸村はでしなに兄から渡された
"デートでスマートに女性をエスコートするポイント"
が書き連ねられた紙を、
さながら受験が迫った学生のように真剣な眼差しで
幾度も読み返し頭に叩き込んだ。
「くのいち、そんなに急がなくても乗り物は逃げたりしないぞ?」
「確かに乗り物は逃げませんけど、
沢山乗るにはいかに素早く並び、
優先券を得るかが大事なんですよー!!」
そういってくのいちは幸村の手を引き目的地まで走る。
行きたがっていただけありリサーチは完璧なようで、
迷うことなく目的のアトラクションに向かう
電車で叩き込んだはずのポイントを全く活かせず、
幸村は内心焦っていた。
「幸村様、着きましたよ!!」
そういってくのいちが並んだ列は
アトラクションへ続く列ではなく、
少し離れた別の列だった。
「くのいち、アトラクションに乗るには
むこうの列に並ばないといけないんじゃないか?」
「こっちであってますよー。このアトラクション人気なので、
こっちで優先券とってあとで乗るほうが効率よかったりするんです
でもあっちもあまり並んでないですし、
券とったら一回乗りましょうか」
そう言って笑顔を向けるくのいち。
完全にエスコートされる側に回っている幸村は、
テーマパークの情報収集を怠ったことを猛烈に後悔していた。
困ったことにテーマパークは幸村が苦手とする
絶叫系のアトラクションが大半を占めていた。
「幸村様、優先券取ったんで、あっち並びましょう!」
そう言ってくのいちに手を引かれて、
今度はアトラクションの列にならぶ。
最後尾には30分街の文字。
くのいちいわく今日は空いてる日で、
30分で乗れるのは相当運がいいらしい。
「くのいち、これはどんなアトラクションなんだ?」
「簡単に言えば高いところから落っこちては上がり、
また落ちるを繰り返すアトラクションです」
にゃはん♪とおどけた様子のくのいちとは対象に、
幸村の胸には一抹の不安が生まれる。
くのいちの言葉からすれば、
今自分が並んでいるこのアトラクションは絶叫系ということだ。
しかも優先券を取ったということは、もう一度乗ることになる。
サーっと幸村の顔から血の気が引いていく。
「幸村様?大丈夫ですか?」
「あ、ああ…」
「もしかして、幸村様って絶叫系苦手だったりします?」
「あまり得意ではないな…」
幸村がそう言うと、くのいちは申し訳なさそうにごめんなさいと呟いた。
「あたし浮かれちゃって…」
沈むくのいちに、幸村は慌ててフォローする。
「そなたが謝る必要はない!そなたが楽しければ、
私も楽しいからな。くのいちが乗りたいものに乗ればいい」
幸村がそう言うとくのいちの顔に笑顔が戻る。
「幸村様、あたしあとで行きたいショップがあるんです」
「ああ。このアトラクションが終わったら行こう」
「はい!!」
そんな他愛のない話をしてるうちに、
幸村たちは、薄暗い部屋に通された。



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