そのまましばらく歩いていると、
くのいちがひとつの建物を指さした。
「幸村様!あそこです!」
建物の中には、大小様々なくまのぬいぐるみが並んでいる。
くのいちいわく、このテーマパーク内でしか買えないものらしい。
店内はだいぶ混み合っていて、
移動するのも一苦労だ。
「この子欲しかったんですよー!
やっぱりペアで揃えるべきですよね!」
「ペア?」
「やだなー幸村様ったら!こっちの子は女の子です」
よく見るとくのいちが差し出した方のくまはピンク色で、
リボンもついている。
「甲斐ちん達もほしがってたんだよねぇ…」
そう呟きながらぬいぐるみを吟味するくのいちをみて、
幸村は笑みをこぼした。
「この子たちにしよう!甲斐ちんと稲ちんにはこっちでいいか」
「決まったか?」
「はい!買ってきますね〜」
レジに向かおうとするくのいちを見送って、
幸村は店の一角にあったあるものを手にとり
1番空いているレジへ向かった。
「おまたせしました!」
先に会計を済ませた幸村のもとに戻ってきたくのいちの腕には、
先程のくまがすっぽり収まっていた。
幸村はくのいちから荷物を受取る。
「ゆ、幸村様!あたしが持ちます!!」
「いや、私がもつ。代わりに、これをその子たちに着せるといい」
幸村は店で買ったぬいぐるみ用の服を差し出した。
水兵風で女の子用はピンクを基調とした可愛らしいデザインの服である。
店でくのいちが暫く眺めていたのを見ていた幸村は、
それを買って贈ることにしたのだ。
「え?これ…」
「今日はくのいちに頼りっぱなしだからな。
さっき見ていただろう?」
「ありがとうございます、幸村様!
さっきレジに並んだでたの、
これを買うためだったんですね」
幸村が見られていたことに苦笑を漏らすと、
くのいちも三成さん達へのお土産かとおもってましたと言って笑った。
近くのベンチへ移動して、買ったばかりのくまに服を着せる。
「あの、幸村様?」
「なんだ?」
「今日は本当にありがとうございます。
連れてきてもらったし、この服も…」
頬を赤らめはにかむくのいちの頭を優しくなでる。
「礼を言われるほどのことではないぞ?
さっきも言ったが、
私はくのいちに手を引かれてばかりだったからな」
そう言って幸村は照れたように笑った。
「くのいち、私も三成殿や兼続殿に土産を買いたいのだが、
どこかいい場所はあるか?」
「そうですねぇ…色々ありますから、
順番に見て回りましょう!」
服を着せ終わったくのいちが立ち上がり幸村の手を引く。
「ついでに、絶叫系のアトラクションにも乗りましょうね幸村様!」
何度も乗れば慣れますよ。とおどけながら言うくのいちに、
幸村は言いようのない不安を感じながらついて行った。
その後くのいちの宣言通りあらゆる絶叫系アトラクションに乗せられ、
幸村は死ぬ思いをする事になるのだが、それはまた別のお話。





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