雰囲気たっぷりの説明が行われる。
どうやらオーナーが持ち帰った人形の
呪いをうけたホテルという設定らしい。
先に進み、いよいよアトラクション
―貨物用エレベーターという設定らしい―に乗り込む。
座席につくと扉は閉ざされ、ゆっくりと上昇する。
途中で停止し、目の前に一つのフロアが見える。
「あ、幸村様ここで写真らしいですよ!!」
くのいちは嬉々としてポーズを決めるが、
すでに極限状態で恐怖と戦っている幸村にはそんな余裕などない。
そうこうしているうちに、最上階まで上がり、
目の前にパーク内の景色が広がる。
「幸村様!すごく良い景色…っ!」
くのいちの言葉を遮るように落下する座席。
周りが悲鳴をあげる中景色に油断していた幸村は、
声も出せぬほどの驚きと恐怖に打ちひしがれていた。
何度か上昇下降を繰り返して、
ようやくアトラクションは終了した。
「大丈夫、ですか?」
「だい…じょうぶ、だ」
かろうじてそう答える幸村だが、
若干血の気の引いた顔で言われても説得力がない。
「幸村様!写真、ありました!」
くのいちが指差した先には楽しそうにポーズを決める彼女と、
恐怖に顔がひきつった幸村が写っていた。
情けないと思う幸村をよそに、くのいちはその写真を購入した。
「そなたが行きたいと言っていた店とはどこなんだ?」
「あ、それはですねぇ…ここからちょっと離れた所にあるんですよ。
そこにあるクマのぬいぐるみが欲しいんです!」
笑顔で語るくのいちの手を取り歩き出すと、
途端にくのいちは肩を跳ねさせた。
「っ…?!」
「どうした?」
「いえ…なんでもないです…」
そういって俯いたくのいちの頬に
ほんのりと朱がさしていることに幸村は気づかなかった。



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