その日宗茂は思わぬ土産を持ってギン千代の元に帰った。
ダンボール箱に清潔なタオルが敷き詰められ、
その中には弱った小さな黒い鳥。
腹部と羽先が白いそれは、どうやらカササギのようだった。
どうしたのかとギン千代が問えば、
困った様に笑いながら拾ったと一言返ったきた。
「道端に居た。羽を怪我して飛べなくなっていたからな」
困惑が顔に出ていたギン千代に、宗茂が付け足す。
仕事が終わり、同僚と飲みにいった帰りに見つけたらしい。
「家には猫がいるのに大丈夫なのか?」
ギン千代の言うとおり、家にはすでに猫がいる。
鳥を余計に傷つけるのではと、宗茂も考えなかったわけではない。
「ああ、それなら部屋を分けることもできるし、
鳥かごもあずかってきたからな」
そう言って宗茂はいつ鳥かごを取り出した。
小さな体には丁度いいだろう大きさのそれに、
宗茂はそっとカササギを移した。
「明日、病院に連れて行くか」
ギン千代が言うと、宗茂は少し意外そうな顔を彼女に向けた。
「なんだその顔は」
「いや……」
機嫌が急降下したギン千代に、宗茂は苦笑する。
「治ったら、野生にかえすぞ」
「ああ……」
ギン千代はつっけんどんに言うと、電話帳を開いて病院を探し始める。
その様子を微笑ましく思っていると、ギン千代から手伝えと怒鳴られた。
「いつもの所ではダメなのか?」
飼っている猫がよく行く場所がある。
名医と評判だし、申し分ないはずだと宗茂が尋ねれば、
にべもなく鳥は専門外らしいと返ってきた。
それから二人で調べた病院でひと通りの処置を受けたカササギは、
順調に回復して一ヶ月後にはすっかり元気になり、
悠々と空へ羽ばたいていったのだった。

- 1/2 -



しおりを挟む

back

×