「立花!明けましておめでとうなのじゃ!!」
新年早々、立花家に元気な声が響く。
あどけない笑顔を浮かべながら新年の挨拶と共に
自分の胸に飛び込んできた少女を、
ギン千代はしかといけとめた。
「明けましておめでとう今年もよろしく頼む」
「ほむ!よろしくなのじゃ!」
自分の夫、宗茂の友人である忠興が溺愛する奥方なこの少女は、
ギン千代にしがみついたままその笑みを深める。
昨年は、ギン千代たちが細川家へと赴き、新年を祝った。
故に今年は立花家で祝うことになったのである。
「そういえば…立花は年女じゃな!」
「そうだな」
廊下を歩きながらガラシャが言うと、
ギン千代は簡潔に答えてふっと笑った。
「今年は、立花とわらわの年なのじゃ!」
てててと数歩駆けてから振り返ったガラシャは
相変わらず満面の笑みを浮かべながら言った。
ギン千代は頷きかけて、はたと動きを止めた。
「立花?」
ガラシャは亥年なはずである。
なのになぜ巳年である今年が彼女の年になるのだろうか。
目線で疑問をなげかけるギン千代に、
ガラシャは少し照れくさそうに笑って答えた。
「この前婿殿と喧嘩した折、
わらわは蛇のようなおなごじゃと言われたのじゃ」
だから自分の年でもあるとガラシャは言った。
ギン千代はガラシャを溺愛するあの忠興がそんなことを言うのかと
少し意外に感じながら、そうかとだけ答えた。
「わらわも蛇、立花も蛇。お揃いじゃな!」
そういってガラシャは再びギン千代に飛びついた。
「確かに、お揃い…だな」
呟いて薄く微笑んだギン千代にガラシャも笑い、
二人は先に行った夫達が待つ部屋へと急いだ。
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