うっすらを積もった雪で白く染まった街並みを二人で歩く。 クリスマスムード一色の街はカップルや家族連れで溢れかえり、 普段より賑やかに感じる。 家をでた瞬間に捕まれた手が熱い。 出かけようと言われて、少しだけ、本当に少しだけ、 いつもより着飾った自分を見た時の宗茂の顔が頭をよぎり、 ギン千代の頬は熱くなった。 赤く染まった頬を見られたくなくて、目線を逸らした先、 目に入ったそれに思わずギン千代は足を止める。 不審に思った宗茂が、彼女の目線をたどれば、 その先にはショーウィンドウに飾られた、 小さな番猫のペーパーウェイトがあった。 それを見て、宗茂は彼女の手を引き、入り口へと向かっていく。 「宗茂?」 「さすがに寒いからな、入って暖まりたい」 適当な言い訳をして、宗茂は店の扉を開いた。 暖房の聞いたこじんまりとした店内には、 クリスマスらしい綺羅びやかな装飾が施され、 可愛らしいお菓子がディスプレイされている傍らに、 これまた可愛らしい雑貨が並べて売られている。 その中に、ギン千代が目をとめたペーパーウェイトもあった。 「いらっしゃいませ!お菓子と一緒に可愛い雑貨はいかがですか?」 クリスマスだからか、サンタの衣装を纏った店員の声が響く。 ツリーや、雪だるまのクッキー、スノーボール、シトーレンなど、 クリスマスらしいお菓子に思わずギン千代は目移りする。 様々なお菓子を自由に組み合わせて、 ラッピングしてもらえるサービスもあるようだ。 ギン千代は入り口横においてある小さな籠に手を取り、 気に入ったものを放り込んでいった。 しばらくして買い物を済ませ店をでると、雪がちらつき始めていた。 道理で冷えるはずだと言う宗茂のつぶやきが聞こえてくると同時に、 手をとられ歩き出す。 「雪がひどくなる前に帰るか」 宗茂の言葉に頷いて、浮かれた街の雰囲気に当てられたのだと言い訳して、 ギン千代はそっと繋がれた手を握り返した。 二人揃って帰宅して、温かい飲み物を飲みながらソファに腰掛ける。 一息ついたところで、宗茂が先ほどの店で買ったものをギン千代に差し出した。 渡された袋を開くと、出てきたのは先ほどギン千代が見ていた猫のペーパーウェイト。 「欲しがっていただろう?」 ギン千代はわかりやすいからな。 驚いた顔のギン千代に、宗茂はそういって微笑んだ。 「それで、ギン千代さっきの返事をそろそろ聞いてもいいか?」 「それは……答えはわかりきっていると、自分で言っていたではないか……」 「それはそうだが、俺はギン千代の口から聞きたい」 至極真剣な声で言われ、顔に熱が集まるのを感じてギン千代は俯く。 自分たちは婚約しているのだ。それを今更という気持ちもあり、 ギン千代はますます言いよどみ、沈黙が二人を包む。 「き、嫌いならば婚約などしていないし、こうして一緒に住んだりしない。 この指輪も……嫌ならばとっくに放り投げている」 しばらくして絞り出されたギン千代の精一杯の言葉に、 宗茂の顔がゆるむ。 「ギン千代は可愛いな」 言いながら腰に手を回して引き寄せれば、 ギン千代はすんなり宗茂の腕の中に収まり、おずおずと手を回してきた。 今日は随分素直だなと思いながら、空いてる手を彼女の頬に滑らせる。 「馬鹿者……」 照れ隠しに悪態を付きながらも瞳を閉じたギン千代に、 宗茂はゆっくり口付けた。 →あとがき しおりを挟む back ×
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