「義父上も見ればいいのに」 「父上も年だからな、 寒さが堪えると言ってさっさと寝てしまった」 他愛のない話をしながら、 見上げる夜空には満点の星。 その間を縫うように流れ星は流れ、 二人に降り注ぐ。 「ギン千代」 不意に名前を呼ばれ、 ギン千代は宗茂の顔を見ずになんだと答えた。 その様子に宗茂は苦笑を漏らす。 「覚えてるか?昔二人で同じように星を見た時のことを」 宗茂の言葉にギン千代は眉をひそめ、 覚えていると答えた。 「忘れるわけないだろう…」 まだ二人が小さかった時分に、 夜中家を抜け出して星を見に行った事があった。 流れ星を探すと二人して意気込んでいて、 森や川や様々な場所で空を見上げては、 流れ星を必死に探した。 熱中しすぎていつの間にやら朝になり、 慌てて家へ戻った時には時すでに遅し。 家中は二人がいないと大騒ぎになっていて、 父二人にこってり絞られた。 「あの時の父上たちは怖かったな」 笑いながら言う宗茂に、 ギン千代もそうだなといって笑った。 「確かに父上は怖かったが、楽しかった」 「ああ…ちょっとした冒険だったからな」 二人の小さな笑い声が静かな空に響く。 「また、見れたらいいな。その…二人で…」 「見れるさ。その時はまた俺を起こしてくれ、ギン千代」 「しょうがない奴め…」 再び笑いあって、 二人は一瞬で姿を消す流星に ほのかな願いを託した。 しおりを挟む back ×
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