マイユニについて



いつもより少しだけ遅く起きた朝、
いつもと少しだけ違った風景が広がっていた。
女性陣がせっせと色とりどりの紙を、
切っては貼り切っては貼りの作業をしていて、
扉を開けたまま動きを止めてしまった。
自分よりも早く起きていること自体が珍しい者もいて、
セネリオの疑問はますます膨らむ。
「あ!セネリオおはよう!
丁度よかった。手伝って?」
立ちすくむ彼に気づいたミストが、
無邪気な笑顔で細く切りられた紙の束を差し出す。
意図がわからずセネリオ眉を顰めると、
彼女は完成品をもって説明しだした。
「今日は七夕よ?これと同じものを作って欲しいの」
「七夕?ああ、各々の願望を書き連ね笹に飾るという……」
「願望なんて生生しい言い方しないでよ!
それより、はいこれ。お願いね!」
とりあえず差し出されたそれを受け取り、
アイクの姿が見えないことを尋ねると、
少し呆れたようにため息を疲れた。
「お兄ちゃんなら笹を取りに……」
「帰ったぞ」
ミストの言葉を遮って、開かれた扉の方―
正確には入り口に立つ人物―に目を向ける。
―まさかアイクまで僕より早く起きているとは……。
「お帰りお兄ちゃん!」
「お帰りなさいアイク」
抱えられた笹は、アイク本人よりも大きく、
優雅に葉をゆらゆらと揺らしている。
「お兄ちゃん笹はあそこに飾って!」
そう言って部屋の角を指さすと、
素早く作業に戻った。
セネリオにも手伝うよう念を押すことを忘れずに。
腑に落ちない顔をしていると、
アイクが申し訳無さそうな顔を向けてきたことで、
セネリオは大丈夫ですといって、作業を始めた。
細切りにされた紙を鎖状につなげていくもの。
小さな正方形の紙の角と角をくっつけていくもの。
やり始めると、これが意外と楽しくて、
ミストに止められるまで続けていたせいで、
セネリオが作ったものは随分長くなってしまっていた。




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