｢ルグレさん！｣
ルキナが後ろから恋人に声をかけると、ルグレは振り返る。
駆け寄ってきたルキナの手には
四角い容器に入った豆と黒く細長い物体。
見慣れないものにルグレが首を傾げると、
ルキナは嬉しそうに語り出した。
｢先ほどサイリさんに教えていただいたのですが、
今日は節分という日だそうです｣
｢節分？｣
ルキナは豆の入った容器を差し出す。
｢厄祓いの意味を込めて、豆まきをするんだそうです｣
お決まりの口上もあるんですよ?と
無邪気な笑顔を向けるルキナに、
ルグレもつられて笑顔になる。
｢お父様に鬼役をお願いしたので、
ルグレさん一緒に豆まきしましょう！｣
ルキナの言葉を裏付けるように、
鬼のお面を持ったクロムが近づいてきた。
｢ルキナ、俺はどうすればいいんだ?｣
｢お父様はお面をつけて立っているだけでいいです。
行きますよルグレさん!｣
そう言ってルキナはルグレに豆まきの口上を耳打ちし、
クロムに向き直った。
クロムは鬼の面をつけ、
どこからでもこいと仁王立ちで意気込んでいる。
ルグレは不敵な笑みを浮かべると、
豆を握りこんだ。