マイユニについて



ミストは苦笑しながら完成品を受け取ると、
引き換えに黄緑色の短冊を渡した。
「セネリオもちゃんと願い事書いてね!」
笑顔でそう言うと、ミストは他の団員たちにも短冊を配るために、
走って去っていった。
「願い事……」
小さく呟いて、自分の願望―というと彼女は怒るが―を思い浮かべてみが、
どれも不毛で思わずため息が出る。
どうあがいても、自分の本当の願いなど叶うわけがない。
自分が印付きで、彼女達が普通のベオクである限り。
ならせめて……。
セネリオは短冊にペンを走らせた。
彼が自分の短冊を飾りに行った時には、
すでにいくつか下がっていた。
好奇心に負けて、そっといくつかの短冊を覗き見る。
『肉をたらふく食べたい』
『可愛い女の子とお知り合いになりたい』
『弓がもっとうまくなりますように!』
相変わらずな団員達に思わず笑みが漏れる。
自分に短冊を渡して来た少女のものは見つけられず、
少なからず落胆している自分を自覚しつつ、
セネリオはそっと目立たない位置に自分の短冊を飾った。




「皆飾ったかなぁ?」
日が沈み、星が夜空を彩り始めた頃、ミストは笹の様子を見に来ていた。
色とりどりの七夕飾りに皆の願い事が書かれた短冊。
ふと目立たない位置に飾られた黄緑の短冊が目に入った。
わずかな背徳感と好奇心を抱えその短冊を手に取る。
そこに書かれた願いを見るやいなや、
ミストは短冊を書いた人物の元へ駆け出していた。


「セネリオ!!」
目当ての人物は自分の兄と何やら話していたが、構わず彼の背中に飛びついた。
「うわっ!」
華奢な彼は悲鳴を上げ、僅かによろけたが、
しっかりとミストを受け止めた。
「いきなり何なんですか……」
「ありがとうセネリオ!大好き!!」
そう言えば、彼は訳が訳が分からないという顔をしながらも、
耳まで赤くなった。
その様子にミストははちきれんばかりの笑みを浮かべて、
より一層力を込めてセネリオに抱きついた。



彼女の願いは彼とずっと一緒に居ること。
大して彼の願いは彼女の願いが叶うように……。
叶うはずのない願いが書かれた短冊が二つ、風に揺れた。



×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -