マイユニについて



「鬼は外!福は内!」
ルキナに教えてもらった口上とともに、
ルグレは渾身の力を込めてルキナと共に豆をぶつけた。
「痛っ…!」
思わず痛みに声をあげるクロムに構わず、
ルグレは豆をぶつけ続ける。
容器の中の豆がだいぶ減った所で、
ルキナがストップをかけた。
「ルグレさんそろそろ、
こちらをいただきませんか?」
そう言ってルキナは先程持っていた黒い物体を差し出した。
「これは?」
「恵方巻きです。今年は南南東を向いて食べるんだそうです」
食べてる間は喋ったり、途中で口を離してはダメですよ。
そういってルキナはルグレとクロムの手に恵方巻きを握らせる。
「随分太いんだな…」
「でも美味しそうだよ?ね、ルキナ?」
同意を求めようとルグレがルキナの方へ目線を向けると、
彼女はすでに南南東を向き、
その小さな口で必死に恵方巻きにかぶりついていた。
太い恵方巻きはルキナには相当食べづらいようで、
その目にはうっすら涙が浮かんでいる。
「っ…!」
その煽情的な光景に、ルグレは生唾を飲む。
瞬間、背後からクロムの鉄拳が飛んできた。
「痛!ちょ…何するんだクロム!」
「今俺の娘で良からぬ妄想をしただろう」
「そんなわけ…!ない…だろう…」
図星をつかれ、尻すぼみな返答をしたルグレに、
クロムはじとりとした目線を送る。
その状態は恵方巻きを食べ終わったルキナが、
不思議に思って声をかけるまで続いた。




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