なぜ、あなたがこの汚れた悪魔である私を使い魔にしたのか問うたことがある。
──寂しかったから
それだけ……、本当にそれだけだった。
汚れた私を使い魔にしたことであなたは話題になり、一人また一人とあなたの周りには常に人が集まっていた。
あなたは笑っていた。嬉しそうだった。
「もう飛ばなくていい」
黒い翼を広げた私に、ある日あなたはそう言った。いつものように、優しい声で。
「きみの願いは自由だったね」
私に近づくあなたの顔は微笑んでいる。その細めた目には冷たい色が落ちて、孤独感を覚えてしまう。
あの日交わした契約。その内容は、互いの願いを叶えること。同時に、願いが叶えば契約は切れる。
「僕はもう寂しくない。願いは叶ったんだよ。次はきみの番だ」
あなたは人差し指を私の額に触れさせて、魔法陣を浮かび上がらせる。
私はこの時初めて後悔した。自由という希望を抱いてしまったことに……
しかし、これは契約。もう取り消すことはできない。
契約が切れるとき、使い魔の記憶は消える。自由を選んだ私は、自由になってもあなたのことを忘れてしまうから、きっとあなたの元へは行けない。
いつからだろう。こんなにあなたを好いてしまったのは。私は、悪魔に隷属を誓わせるような使い魔の契約をする人間は大嫌いだった。でも、あなたは違ったの。
あなたは私とたわいのない話をしてくれて、私に笑いかけてくれた。私が傷つけば、あなたは私に優しい眼差しを向けてくれて、心配してくれた。
仲間から聴いた、使い捨ての道具のように私たちを扱う人間の話とは全く違っていたの。あなたは私を友達のように、家族のように……恋人のように扱ってくれたんだもの。
できることなら、ずっとあなたのそばにいたかった。
視界からあなたが消えていく中、あなたの目から泪がこぼれた気がした。
その顔はあまりにも悲しげで、寂しげで──。
なぜ? もうあなたは寂しくないんでしょう?
寂しそうに嘆くきみがいたから
僕は手を差し伸べてしまったんだ
同じものが 惹かれ合うように──
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泪に溶けた自由
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