「どうだい? これなら暖かいだろう?」
僕が言うと、蝶はわずかに身を震わせてからぶっきら棒にこう言った。
「……何であなたの餌にもなる私を助けるのよ」
「やめておくれよ。僕は芋虫は食べるけど、蝶は食べないよ。だって蝶は春につきものだからね」
そう言って、僕は大好きな春の景色をうっとりと脳裏に思い浮かべる。
黄色や桃色の花たちが咲く野原で、綺麗な蝶たちが優雅に飛び回っている。その中を僕は翼を広げて滑空し、あの心地いい風邪を感じるんだ……。
「春になったら黄色や桃色の花が咲いて、そこに蝶がふわふわ飛んでるんだ。僕の大好きな春を迎えるためには、きみが必要なんだよ」
蝶が僕の話に何も答えてこないから、僕はひとりで語り続ける。でも、やっぱりひとりでしゃべるのなんて寂しいから、最後に僕はくちばしを蝶に近づけてこう言ってあげたんだ。
「来年の春はきっと暖かいね」
「……そうね」
答えても、蝶は動かない。それでも、蝶は冷たい羽をピクリと動かした気がした。
春を見る冬越燕(少しでも 大好きな春を感じていたいから――)
[prev] [next]
春を見る冬越燕4
home