第三章没(十字路)

2011/05/03 13:06
第二章没に関係してくる大切な描写。
でもやっぱり設定を変えたら入らなくなってしまったので没に……
というかこれ思いっきりネタバレ含んでる気がする



「……やっぱり、似てる」

 テルジアの隣に座るシェンナが、スープを飲み込みながら呟いた。

「昨日の夜に飲んだ、神父さまのスープと似てる」

 シェンナの言葉に、テルジアは疑うようにスープを見る。
 芳ばしい香り、黄金色のスープ。確かに、昨夜テルジアが作ったスープと似ていた。それもそのはず。テルジアの料理という料理は彼女に教えられたものなのだから。
 大して得意でもない料理は、彼女の作り方を真似るしかない。似てしまうのも無理はなかった。しかし、あれ以前の記憶がない彼女がなぜここまで同じものを作れるのか。まさか、記憶はすべて消し切れていなかったのか……。
 一瞬横切った不安に、テルジアは恐怖からくる戦慄を覚えた。

「シェンナ。神父さまは都市から来たんでしょう? それなら色々なことを知っていてもおかしくないわ。もちろん、色々な料理もね」

 スープで汚したままのシェンナの口を拭いてやりながら、エレアノールは母親のように言う。

「……うん」

 シェンナは納得いかないような表情で頷いた。





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