「綾部ってすっごく綺麗な髪してるね」


横に座る綾部の髪があんまり気持ち良さそうだったから、私は我慢出来なくなって思わず柔らかな髪に顔を埋めた。…うわ、柔らかっ!しかもいい匂い!


「そう?あんまり意識した事ないけど」
「そうだよ。タカ丸さんから言われない?色も綺麗だし、ふわふわしてて気持ちいいー」
「あんまりぐしゃぐしゃにしないでよ」


顔を埋め、更に手で髪をわしゃわしゃして堪能していたら流石にちょっと嫌そうな声が聞こえた。仕方なく髪から顔を上げると、綾部の整った顔が私をじっと見ていた。ああ、そういえば。


「髪だけじゃないよね。綾部って睫毛長いし肌もすっごく綺麗」
「…ぼく男だしそれってあんまり嬉しくないんだけど」
「どうして?いいなあ羨ましいよ」


確かに綾部は性別としては男だけど、綺麗だとか美人だとかの言葉が恐ろしく似合う。女の私よりずっと綺麗で、私と綾部が一緒にいるとぱっと見恋人ではなく友人に見えると同じくのたまの子に言われた事がある。なんというか綾部は見た目が、というより存在が綺麗なのだ。なんか眩しいな。


「いいなあ綾部は。たくさん綺麗なもの持ってるよね」
「客観的な物の言い方だね」
「だってそうでしょ?」
「違うよ。これは全部ほたるのものでもあるんだから」
「…どういう意味?」
「確かにこの髪も睫毛を肌もぼくのものだけど、ぼくは君の恋人で、君はぼくの恋人だろう。ぼくの全部は君の為にあるんだよ」
「わあ…」


綾部ったらたまにとんでもない事をいけしゃあしゃあと言うんだから。顔こそ赤くしないものの、心臓はどくどくと波打っていいる。


「綾部の全部は私のものだなんて考えた事もなかったな」
「当たり前の事だよ。だからぼくの全部がほたるのものであるように、ほたるの全部もぼくのものだからね」
「ええ?そしたら私ばっかり良い思いしちゃう気がする。私の全部と綾部の全部じゃ全然釣り合ってないよ」
「そんな事ないよ。ほたるはただずっとぼくの傍にいてくれればいいんだから」
「…なんていうか綾部、さっきから恥ずかしくないの?」


傍にいてくれればいいだなんて、なんて殺し文句だろう。綾部がそう言ってくれるのは嬉しいけど、私としてはやっぱり納得がいかなかった。だってそれじゃあ綾部も私の傍にいてくれるって事になるから、私の幸せにだってなるじゃないか。私は綾部の為に何かしてあげたい。


「私も綾部に何かしてあげられればいいのに」
「傍にいてくれればいいって言ってるのに、頑固だね」
「綾部も逆の立場になれば分かるよ。この悔しさは」
「そんなにぼくの為に何かしたいの?」
「したいよ」
「じゃあ今すぐぼくに口付けて。そしたらぼくすごく幸せな気持ちになれる」
「そんな事で?」
「そんな事で」


綾部ってば意外に安いなあ。でも口付けるだけで綾部が満足出来るならと思い、私は綾部にそっと唇を寄せた。…相変わらず柔らかいなあ。目を閉じて綾部の唇の柔らかさをふにふにと堪能する。気持ちいいな。しばらくそうして私が満足したところで目を開けると、目を細めて柔らかく笑う綾部がいた。なんて綺麗なんだろう。


「綾部、今幸せ?」
「すごく。ほたるは?」
「幸せだよ。今だけじゃなくていつも」
「偶然。ぼくもだよ」


なんだか気恥ずかしくて、私はもう一度綾部の柔らかな髪に顔を埋めた。



***

GYAAAAAなんか変に甘!い!なんかなにこいつら…みたいな空気が否めないですね。でもいつも綾部に対してツンデレてるお話ばかり書いてるので楽しかったです!
リクエストありがとうございました!




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -