これの続き



私に水をぶっかけたミロカロスのトレーナーことモミアゲは、ミクリさんというらしい。あの日ミクリさんの自宅に連れ去られて問答無用で風呂場へ押し込まれ、彼の策略にはまってしまった私は、もう遅いからと言われ強引にお泊りまでさせられた。まだ日は普通に出ていたけど、帰り道が分からない上、ミクリさんの目がなんだか怖かったのでうっかり泊まってしまった。が、何もなかったとだけ言っておく。断じて。

翌日ようやく無事に家に着いて安心した私は、それがまだ事の始まりであった事を知らなかった。次の日からミクリさんはお詫びだと言って、朝は私を仕事へ送り出し、帰りは迎えに来て夜ご飯にお洒落なレストランへ連れていくようになった。断れなかった事は今までのいきさつから察してほしい。

そしてこれは最近知った事だが、ミクリさんはなんとこのホウエン地方のチャンピオンだったのだ。ごくごく普通の一般人であった私は驚き、でも思わず尊敬してしまい、今まで気持ち悪いと思っていた送り迎えもチャンピオンという肩書きにすべて忘れ去ってしまった。だってチャンピオンだよすごくない?ていうかよくチャンピオンのポケモンの水技喰らって平気だったな私。

そんな簡単な理由でミクリさんに送り迎えされるのが日常になってしまいつつある今日、ミクリさんはポケモンリーグ主催のパーティーがあるらしく、私は仕事上がりに彼にプレゼントだよと言われ渡された綺麗なドレスを着せられ連行された。パーティーではカゲツさんやフヨウさんなどの四天王を紹介してもらい、おまけに美味しい料理もたくさん食べたので、私はとても満足だった。パーティーも終盤になってきて、口直しにとミクリさんがシャンパンを持ってきくれた時、私とミクリさんの方に灰色の髪の人が歩いてきた。


「ミクリ、遅くなってごめん。しばらく石の洞窟にいてね、つい数時間前にこのパーティーの事を知ったんだ」
「やあダイゴ、相変わらずだね。元気にしていたかい?」
「まあね。君も相変わらず変わりなさそうだ。……ところで、彼女は?」


灰色の髪の人の視線が私に向けられる。うわあ綺麗な人だ、ミクリさんもそうだけど、綺麗な人って類友的な感じで自然と仲良くなるのかな、そんな事を考えながらぼけっとしていると、ミクリさんに肩をぐいっと引き寄せられた。え、何?


「彼女はほたる。私の恋人さ」


………え?にっこり笑って、女神の様な汚れなき顔でミクリさんはとんでもない事を言ってのけた。恋人?誰が?驚いて私が言葉を発っせずにいると、灰色の髪の人が不思議そうに私を見た。すかさずミクリさんは照れ屋さんだねほたるはと爽やかに言いのけ、私はその言葉を右から左に聞き流した。私は馬鹿か。過去の失敗を忘れたのか。どうやら私はまた彼の罠にはまってしまったらしい。私は美しく微笑むミクリさんを、ただただ呆然と見上げた。






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