「ほたる、好き。だーい好き」


クダリという男は実に物好きである。自分で言うのもなんだけど、私は所謂根暗というやつで、他人と話せない訳じゃないけど極力接触を避けたいと思っている。口数は少ないし滅多に笑わないし、正直周りから見たら関わりたくない部類の人間だと思う。それなのにクダリときたら、私が冷たくあしらおうが無視しようが毎日私の所へ来て、私の事を好きだというのだ。これを物好きと言わずに何て言う?クダリの事は嫌いじゃないけど、明るくて素直なクダリが暗くて偏屈な私に笑顔で笑いかける度、どうしようもない劣等感に襲われる。表面では私に笑いかけてくれていたって、どうせ心の中じゃクダリも私を馬鹿にしてるんでしょう、同情してるんでしょう。…そう思ってしまうのだ。だからクダリが私に笑いかける度、苦しくて苦しくて仕方がない。だから人と関わるのは嫌だ。私はこんな思いをするくらいなら、一人きりでいたいの。


「ねえ、クダリ」
「なあにほたる」
「お願いがあるの」
「ほたるのおねがいならなんでもきくよ」
「ありがとう。…じゃあもう、私に関わらないで」


にこにこと笑っていたクダリがぴたりと動きを止めた。私は正面からクダリの顔が見れなくて、視線を下に落とした。


「…な、なんで?」
「クダリは変わってるけど人見知りしないし明るいし、皆にも愛されてる。なのに私みたいな暗くてうじうじしてる人間に好き好んで関わろうとするなんておかしいよ。クダリが私の事で何か言われるのも嫌だし、私自身も辛いの。クダリが私に話し掛ける度、私、すっごく惨めな気持ちになる。…だから、」


関わらないで、そう言おうとしたのに、今度は私が動きを止めてしまった。いつでもどんな時もにこにこ笑みを絶やさなかったクダリが、目から大粒の涙を流していたのだ。


「えっ…クダリ?ど、どうかしたの?」
「、やだ」
「え?」
「ほたるぼくのこと嫌いになった?だから関わってほしくない?」
「…いや、そういう訳じゃないけど…」
「じゃあ何がだめ?ぼくなんでも言うとおりにする。ほたるがしゃべるなって言ったらぼくだれとも口きかないし笑わないでって言ったらぼくもう笑わないよ。だからぼくの傍からいなくならないで、ほたる、いやだよ」


糸が切れたようにうえええええっと泣き出したクダリは、私のお腹目掛けて飛び込んできた。しがみついたまま壊れたスピーカーみたいに、いやだいやだいやだ傍にいていやだよほたるいやだいやだいやだ、そう繰り返すクダリに、私は呆然としてどうする事もできなかった。私の事なんてほっとけばいいのに、どうしてクダリは私の事なんかで泣くんだろう。






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