「ミクリって趣味悪いよね」


優雅に紅茶を飲んでいたミクリは、そっとカップから口を外した。それだけなのにものすごく絵になるから不思議だ。


「…いきなり失礼じゃないかい?」
「いや前から思ってたんだけどさ、髪型もそのモミアゲよく意味が分からないしそのマントも正直ダサいよ」
「ほたる、この髪型やマントは私の魅力を一層高める素晴らしい要素なんだよ。よく見てごらん、素晴らしくグロリアスだろう」


目を凝らしてじっと見てみた。うん、分からん。ミクリって顔が綺麗なのに髪型とマントですっごく損してると思う。でも本人は良いと思ってるんだから、趣味が悪いとしか言いようがない。


「…私にはちょっとハイセンスすぎて分からないかな。やっぱり趣味悪いよ」
「そんな事はないさ」
「好きな花が薔薇とかも意味分からないし…それに彼女だってさ、私じゃなくたってミクリならもっと綺麗な人だって可愛い子だっているのにねえ」


先程と同じく、何気なく呟いただけだったのに、ミクリの顔からすっと笑顔が消えた。あ、れ…怒ってる?というか、怒らせた?予感的中で、普段は優雅な動作しかしないミクリが、ガチャンッと音をたててティーカップを机に乱暴に置いた。ミクリがだよ。やばいこれ大事件じゃないの。


「あの、ミクリ…?」
「それは私の気持ちを疑ってるのかい?私は君が好きだし、君をパートナーに選んだ自分の目が間違っているとは思わないよ。私の服装や髪型に文句をつけるのは構わないが、自分を低く見るのは君の悪い癖だし止めてほしい。ほたる、私は君を選んだ事を趣味が悪いだなんて思った事もない。私は君を愛してるんだ。それなのにそんな事を言われては、いくら私でも腹が立つよ」


何でこんなに話が飛躍してしまったんだろう。一方的にまくし立てたミクリはイライラしながら腕と足を組み、そっぽを向いた。どうしてかはどんなに考えても分からないが、どうやらミクリは私をとても好きらしく、普段は温厚で何してもたいして怒らないくせに私が自分を見下した発言をしたりするとものすごく怒る。しかも機嫌の直りはすこぶる悪い。別に深い意味で言った訳じゃないのに面倒な事になったなあと頭を掻いた。


「えっと、ミクリ…ごめん」
「………」
「私だってミクリが好きだよ。でもさあ、私の気持ちも分かってよ。ミクリは格好良いし素敵だし、比べちゃうのは仕方ない気がするんだよね」
「………」
「ねえもう言わないから許してよ。ごめんってば」
「………」
「ミクリ」
「………」


よほどご立腹らしいミクリは、一言も話さない。…いい加減、しつこいんじゃないだろうか。私謝ってるのにいつまで無視されなきゃいけないの?今度は私の方がイライラしてしまったので、私はミクリに近づき、そっぽを向いている為あらわになった無防備な首筋に軽く噛み付いてやった。流石のミクリも驚いたようで、ようやくこちらを向き私と目を合わせた。


「、びっくりしたな。いきなりなんだい?」
「だってミクリが無視するからむかついた」


ミクリは僅かに目を見開き、にやりと笑いながら「じゃあもう少し怒っている事にしようかな」と呟いた。私はミクリの首筋に、今度は思い切りがぶりと噛み付いてやった。






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