このところ、私は毎日比較的平穏な日々を過ごしていた。前にノボリさんが母がどうだの子がどうなの言ってたけど、どうやらそれは実行されているらしく、前に比べてクダリさんに絡まれる事が減ったのだ。あれだけしつこかったクダリさんなのに、ノボリさんすごいとしか言いようがない。


「ほたる見つけたー!」
「わー…」


…とか考えていたら、これである。何て言うかもうすごい絶妙なタイミングで現れるよねこの人。白いコートをはためかせて全力疾走で走って来るクダリさんに渇いた笑みが漏れた。ああ、でもなんだか少し懐かしい気がする。


「クダリさん、なんか久しぶりですね。ノボリさん突破してきたんですか」
「ノボリ今久しぶりのスーパーシングルトレイン!しばらく戻ってこない」
「ああ…」


流石のノボリさんも挑戦者が来るのはどうしようもないよね。しかもスーパーともなれば、ノーマルトレインとは違い手が抜けない。私はバトルには詳しくないけど、聞いた話スーパートレインのバトルは相当レベルの高いものらしい。ノボリさんは仕事に妥協しない人だから、今頃本気の凄まじいバトルを繰り広げているに違いない。


「聞いて聞いて!最近ほたるに会いに行こうとするとすぐにノボリに邪魔される。ぼくなにもしないのにひどいよね?」
「そこは賛同しかねます」
「ぼくすっごくさみしかった!ほたるはぼくに会えなくてさみしかった?」
「いや寂しくはないですけど」
「えー!ほたるもひどい!」
「…でもまあ、毎日しょっちゅう来てたのに急に回数が減ったので正直変な感じはしましたけど」


事実である。寂しかったわけじゃないけど、クダリさんがほとんど姿を現さなくなった事はなんとなくだが不思議な感じがした。でもそりゃあ、あれだけ毎日、いや一日内でもしょっちゅう絡みに来ていた人が急に来なくなったら気になるよね?…私は別に変な事は言ってない、はず。


「それほんと!?」
「えっ?いや…はい」


そう、変な事は言ってないはずなのに、クダリさんは子供みたいに目をきらきらさせて、力加減なんて一切なしに私に飛び付いてきた。少し前まで臆してたけど、今ではこの行動にも大分慣れてしまった。悪い意味で。せめて手加減して欲しい。…でもなんだかこの感覚も久々のように感じられた。


「ほたる」
「なんですか」
「ぼくとってもうれしい!やっぱりぼくきみが大好き!」
「はあ…どうも」


クダリさんの事は苦手である。だけど今、久しぶりにちゃんとクダリさんを見て会話をして、何故か無性に微笑ましい気持ちになった。…でもこれって久しぶりに知り合いと話してただ懐かしいって感じただけだからだよね?ねえ?他意はないはず。断じて。

…あれ、あれ。さっきから私はクダリさんの事ばかり何を余計な事を考えてるんだ。意味が分からない…疲れてるのか?うん、多分そうだ。今日は帰ったらご飯食べてゾロアと一緒にお風呂に入って早く寝よう。うん、そうしよう。


16.他意はありません






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