シングルトレインの二十一戦目を終えたノボリがなかなかもどってこなかったからどうしたのかなあなんて思ってたそのとき、執務室のドアをバァンッと開けてノボリが入ってきた。いつもぼくがそうやって入ると怒るのに。なんだか強張った顔をしたノボリはぼくにするどい視線を向けた。…うわあ、似たような顔のぼくが言うのもなんだけどこわい。


「ノボリどうかしたの?」
「クダリ、わたくしはこれからほたる様を貴方から全力でお守りいたします。よって軽率な行動は控えるように」
「え?」


ノボリはきちんとドアを閉めてからネクタイを締め直して、つかつかまっすぐに歩いてきてぼくの前の自分の椅子にすわった。え、なに?ほたる?なんだかノボリの様子がおかしい。


「わたくしは気がついたのです」
「なにが?」
「わたくしは以前よりほたる様を他の従業員に比べ気にかけている節がありました」
「それはぼくも知ってるけど」
「それが何故なのか、自分でも分かりませんでしたが、先程ようやく理解しました。わたくしは貴方のいかがわしい手からほたる様をお守りしたかったのです!」
「え、」
「ほたる様は特別女性らしい訳ではなくむしろ冷めている所がありますが、見ていると何故か保護欲に掻き立てられるのです。例えるなら母が子を見守るような、そんな気持ちでございます」


…ぼくのいないとこで、ノボリになにがあったんだろう。母が子を思う気持ち?ノボリ男じゃん。せめて父じゃないの。いろいろ言いたいことはあったけど黙っておいた。…なーんだ、そっか。ノボリもほたるが好きだと思ってたのに、ぼくの好きとはちがうみたい。まあノボリ鈍ちんだから、自分の気持ちを勘違いしてるだけかもしれないけど、ぼくにとってはとってもいいニュースだ。双子で一人の女の子取り合うなんてつまらない昼ドラみたいだもんね。


「そういう訳ですのでクダリ、ほたる様の意志を無視した行動や過度なスキンシップはわたくしが許しません」
「…たとえば?」
「むやみやたらに抱き着いたり、ライブキャスターで過剰に連絡をとったりする事です」
「えー!」


どうしよう。ノボリがライバルじゃなくなったのはいいけど、なんだかめんどうなことになっちゃった。ほたるに抱きついちゃだめなんていやだし、電話だっていっぱいしたい。でも一度こうだと決めたノボリはぜったい自分の意志を曲げたりしない。ただでさえほたるはぜんぜんデレてくれないのに、加えて全力でぼくのじゃましてくるノボリを想像したらあたまが痛くなった。


「ノボリの鬼!」
「失礼ですよ。第一わたくしとて、ほたる様が貴方を好いていたならこんな事はいたしません」
「…じゃあほたるがぼくのこと好きになったらいいの?」
「……………まあ、そうですね。それならば仕方がありません」


どうやらそれ以外道はないみたいだった。よし。はやくほたるに好きになってもらえるようにがんばろう。…まあでも、これからも抱きついたり電話したりするのは止めないけど。


15.最大の敵現る






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