「…おやクダリ、その手怪我をしたのですか?」


ぼくの手に巻かれた包帯を見て、ノボリが顔をしかめた。ぼくも包帯を見て、ノボリとは逆に口の端を上げて笑った。


「へへへ、うん。ほたるのゾロアに噛まれちゃった」
「ほたる様の?確か大人しい気質であったと思いましたが…クダリ、まさかまたほたる様にいかがわしい事をしたのでは…」
「ちがうちがう!」


ほんとにいかがわしい事なんてしてない。ぼくはただほたるに抱き着いただけなのに、なんでかゾロアが噛み付いてきたんだ。ぼく、ほたるのゾロアとはすごく仲良くなりたいんだけど、なかなかうまくいかないなあ。あの子の性別がオスなのも理由のひとつかもしれない。

でもそのおかげで、いつもはちょっと冷たいけど、なんだかんだいいつつほたるはこうしてぼくの手を手当てしてくれた。うれしい。それにちょっと嫌われてるかなって思ってたのに、ほたる、ぼくのこと嫌いじゃないって!思わずにやにや笑ってしまった。ノボリが怪訝な顔をしてぼくを見てる。でもそんなこと気にならないくらいうれしかった。だって、


「ぼくほたるがとっても好き!どうしたらほたるもぼくのこと好きになってくれるのかな」
「…クダリ、貴方恋愛感情でほたる様の事が好きなのですか?」
「そうだよ」


ノボリはぼくがほたるをそういう意味で好きだということに驚いたみたいで、目をぱちぱちさせていた。むしろあの顔はぼくが「恋愛感情」を知っていることに驚いたって顔だ。ノボリ分かりやすい。

でもぼくから言わせてもらえば、そういう事にうといのはノボリの方だ。ぼくはほたるを好きってちゃんと自覚してるけど、ノボリは自分がほたるに惹かれてるって気づいてない。人を好きになる気持ちに気がつかないなんて、ぼくよりノボリの方がずっとこどもみたいだ。


「クダリがほたる様を…わたくしはてっきり、ただ懐いているだけかと思っていました」
「ぼく犬じゃないよ」
「そんな事は分かっています。ただ、あまりに予想外だったので」


あんなにもあからさまにアピールしてるのに?やっぱりノボリは鈍ちんだ。これはほたるにも言えることだけど。とにかくいくらノボリでも、こんな鈍ちんにほたるをあげる気なんてない。


「あげないよ!」
「はい?」
「ほたるはノボリにはあげない!」
「わたくしは別に…ほたる様とバトルしたいとは思っていますが…。というかクダリ、貴方のものではないでしょう」
「いいの!あげない!」


ノボリはこどもだ。でも、こんな牽制をしてほたるを独り占めしようとするぼくも、やっぱりまだまだこどもなのかもしれない。

ちょっと雑な包帯の結び目を見て、ぼくはもう一度笑った。ほたる、早くぼくのこと好きになってくれないかなあ。ぼくはこんなに大好きなのに。


09.白の牽制






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