私のゾロアは天使だ。いや、正しくは天使のようにかわいいといったところか。ゾロアを見ていると癒されるというか疲れが取れるというか、とにかく昼休みと退勤後は休憩室でゾロアといちゃいちゃするのが私の日課である。


「ゾロア、おいで」
「きゃん!」


私の唯一の手持ちであるゾロアは、ライモンシティの東のゲート抜けて少し奥に入った迷いの森(別にたいして広くもないのに何故迷いの森だなんて言われてるのかは分からない)で怪我をしていたので手当てをし、お腹が空いていたようなのでそのへんに成っていたモモンの実を食べさせたら何故かとても懐かれたので、それ以来うちで保護しているポケモンである。自慢じゃないが私はあまりポケモンに好かれる体質ではないので、懐いてくれている事がとても嬉しい。

私はトレーナーではないので、ゾロアは私の家で至って普通に暮らしている。もしかしたらゾロアはバトルをしてみたいと思っているかもしれないけど、十歳の時旅に出なかった私はバトルなんてものとは無縁だ。というか、おそらくだけど私にはそういったセンスがないんだと思う。それを薄々感じ取っていたから旅に出なかったわけだけど。


「ゾロア、トレーナーの才能のかけらもない主人でごめんね」
「きゅぅん」


ゾロアはかわいらしく一鳴きすると、これまたかわいらしく擦り寄ってきた。ものすごくかわいい。自分でも自覚があるくらいものぐさで物事に執着のない私だけど、ゾロアがいるなら一生恋人なんていらない。そう思ってしまうほど私はゾロアにメロメロなのである。


「ああもう!好き!」
「ぼくもほたる好き!ほたるは?」


…何だ今の雑音。ここは清掃員の休憩所で、おばさん達はもう上がって帰ってしまってここには私とゾロアしかいないはずなのに。まあ分かってるんだけど。私はじっとりとした目でいつの間にか真横にいたクダリさんを見上げる。


「…クダリさん、何故ここに」
「ほたるがいるから」
「いい加減仕事してくださいサブウェイマスター」


とはいっても、休憩室に備え付けられたモニターでどのトレインが動いているか確認すると、シングルトレインとカナワ行きのトレインがが動いているだけのようであった。つまりダブルとマルチ担当であるクダリさんは暇なんだろう。書類整理の経過をクダリさんに聞くのは野暮である。


「ほたる今日どこにいたの?全然会えなくて寂しかった」
「今日はカナワ行きのトレインのホームにいたんです」
「えー!カナワ担当になったの!?やだ!」
「違いますよ。今日はカナワ担当のおばさんが休んだから助っ人に行ったんです」
「…ほんと?」
「本当です」
「よかった!」


クダリさんはにたりと笑うとそのまま私に飛びついてきた。相変わらず本能のままに動く人だ。クダリさんのスキンシップは唐突で、初めはいちいち驚いてたけど、今となってはあらかた慣れてしまった。抵抗すればするほど馬鹿力で押さえつけられるのも学習済みである為、こういう時は放置するに限る。


「、っ痛い!」
「え」


クダリさんが急に叫んだ。びっくりして顔を上げると、私のゾロアがクダリさんの手に(手袋越しに)噛み付いていた。人見知りだけど大人しく利口なゾロアが人に噛み付いた事なんて一度もなくて、思わず困惑してしまう。


「ゾロア、急にどうしたの?」
「うう、痛い!ゾロア止めて!」


クダリさんは涙目になりながらゾロアを引き離そうとする。いや…この人子供じゃないんだから泣くなよ…。でも確かにゾロアは結構思い切り噛み付いているようで、流石の私も良心が痛みゾロアを止めてやることにする。


「ゾロア、噛んじゃだめ」
「がう、」
「痛い!ほたるたすけて!」


いつもならゾロアは私の言う事をすぐにきいてくれるのに、何故か今はクダリさんにいつまでも噛み付いたまま離れない。本格的に痛くなってきたのか、クダリさんは私から離れ手でゾロアを引き離そうとする。…が、クダリさんが私から離れると、ゾロアは噛み付いたクダリさん手からすんなりと離れた。そして私の足に擦り寄った後、威嚇するようにクダリさんに向かって吠える。…あれ、これはもしかして。


「ゾロア、もしかして私をクダリさんから守ろうと…?」
「きゃんきゃん!」
「ゾロア!」


おそらく肯定の意味で一鳴きしたゾロアをぎゅっと抱きしめた。なんて主人思いのいい子だろう。


「なっなんで?ぼくほたるになにもしてないのに!」
「嘘つかないでください。ねえゾロア」
「きゃんっ」


そういえば初対面の時以来クダリさんの前でゾロアを出した事なかったけど、まさかこんなに格好良くかわいく私を守ってくれるなんて流石は私のゾロアである。涙目のクダリさんを見ながら、今度セクハラされたらゾロアを出してやろうかと考え、邪悪な笑みが漏れた。


「な、なんかほたる顔こわい!なに考えてるの!」
「いえ別に」


そんなわけで、今日も私はゾロアにメロメロです。かわいい!


06.私のかわいい騎士さま

※すみませんゾロアの鳴き声適当もいい所です犬か。変更、削除するかもしれません。






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