プラズマ団来襲事件の結末はあまりにあっけなく、そしてあっという間だったような気がする。ゾロアが私の元に帰ってきてから間もなく到着したジュンサーさん達によって、プラズマ団は一人残らず連行される事になった。ノボリさん、クダリさん、そしてジュンサーさんが手際よくプラズマ団の残党を拘束していく横で、私はゾロアを抱きしめて俯いたまましゃがみ込んでいた。…涙がなかなか止まらなくて、顔を上げれないから。


「全員したっぱのようだけど…なんて数なの。ノボリさんクダリさん、事件への迅速なご協力誠に感謝致します!」
「当然の事をしたまでです。恐らくこれで全員でしょう」
「一応まだ駅員のみんなで探してるから分からないけどね」


かくしてプラズマ団は一人残らずパトカーに詰め込まれ、事件は一応一段落着いたわけだけど、事情聴取の為にノボリさんとクダリさんもこのままジュンサーさん達と行く事になった。だけど二人が足をくじいている私を心配して、なんと私も一緒にパトカーに乗り家に送ってもらう事になってしまった。パトカーで帰宅なんて恥ずかしいやら申し訳ないやらで嫌でたまらなかったけど、歩けないのは事実なので渋々了承した。(乗せてもらう立場なのにふてぶてしくてごめんなさいジュンサーさん)

情けない事に、パトカーに乗ってからも溢れ出る涙は止まる気配を見せてはくれなかった。ノボリさんとクダリさんの前でこんな馬鹿みたいに泣き続けて、恥ずかしいったらありゃしない。それでもパトカーに乗っている間ノボリさんは背中を撫でてくれ、クダリさんは私の片手をぎゅっと握ってくれていて、私はほんの少しだけ安心して肩の力を抜いた。


「ほたる様、一応応急処置は施してありますが、念のため病院に行ってくださいまし」
「ねえノボリ、やっぱりぼく心配。ほたるについてちゃだめ?」
「………駄目です。気持ちは痛い程分かりますが、わたくし達はサブウェイマスター。今はジュンサーさんに協力する事を先決しなければなりません」
「でも、」
「クダリ。…分かりますね?」
「………うん。わかりたくないけど、わかる」
「…申し訳ありませんほたる様、仕事のことは気にしないで休養してくださいまし」
「なにかあったらすぐぼくのライブキャスターに連絡してね。絶対だよ!」


私を家に送り届けてからも、ノボリさんとクダリさんは申し訳なくなるくらいに色々と私の事を心配してくれた。でも私は自分でも何故か分からないくらいに溢れ出す涙を流す事に精一杯で、二人の言葉に黙ってこくこく頷くだけしか出来ない。…嫌だな、ほんと、なんて情けないんだろう。顔を上げる事も言葉を発する事も出来ない私に二人は最後まで晴れない顔をしていたけど、ジュンサーさんに促されて再びパトカーに乗って走り去っていった。


「………」
「………きゃん」


家の前で立ち尽くす私の頬を伝う涙を心配そうに舐めとるゾロアを、無言のまま抱きしめる。涙がいつまで経っても止まらないのは、足が痛いだとかプラズマ団に対する恐怖だとか、そんなものじゃない。無事全てが終わってほっとして、強張った身体の力が抜けたのと同時、涙腺まで緩んでしまったみたいだった。子供の頃迷子になって、一人きりで寂しくて心細くて不安で堪らなくて孤独に堪えている時に、ようやくお母さんに会えた時のあの安心感によく似ている。ほんの少しだけど、あのふざけた連中が怖かった。もうゾロアに二度と会えないかもしれないと思うと、怖くて堪らなかった。


(だけど、もう、大丈夫なんだ)


インターホンを押してしばらく、ようやく玄関から出てきて薄汚れた私を見て驚くお母さんを見て、遂に私はいつぶりか分からないくらい久しぶりに声を上げて泣いた。





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