※ちょっと下品



昼休み、昼食を終えて空腹を満たした私は、いつものように水道で日課である歯磨きをしていた。ご飯を食べたそのままの状態で仕事をするなんてお客様に失礼だし、何より私は清掃員だ。必要最低限の身嗜みは弁えているつもりである。


「あ、ほたるはっけーん!ねえねえなにしてるの?」
「っぶ!」


念入りに歯を磨いていると、突然腰辺りに衝撃が走った。まあ犯人は言わずもがなお約束のクダリさんなんだけど。もうすっかりこの人のスキンシップには慣れっこで、今みたいにタックルされても普段なら私もちょっと嫌な顔をするくらいだ。が、今日は事情が違う。お分かりだろうか、クダリさんにタックルをかまされた今、私は歯磨きをしていたのである。


「な、何するんですかクダリさん!歯ブラシ飛んでったじゃないですか!」
「え、ぼくのせい?」
「当たり前でしょう!しかも歯磨き粉口から出しちゃったし…最悪」


私はクダリさんが腰に飛びついてきた衝撃で、私は思わず口から歯ブラシと歯磨き粉を噴き出してしまった。口から顎を伝う歯磨き粉が気持ち悪い。女子力ゼロだけど、まあクダリさんの前で女子力を出す必要もないからすぐに口元を拭わずに、クダリさんを引き剥がしてちゃんと水道で洗う事にした。


「クダリさん、口洗うんで離れてもらえますか」
「わあー…」
「…ガン見しないでください。何ですか、歯磨き粉垂らしてるのがそんなに面白いですか?」
「ちがう、なんかほたるすごくえっち。口から垂れてるの精え、っもが」
「言わせねーよ」


私は手でクダリさんの口を塞いだ。歯磨き粉がなんだってぇ?ほんとこの人煩悩の塊だな。発想がまさに思春期そのものである。


「最低ですクダリさん。もういいです手で拭いますから」
「あ、待ってまだ拭ぐっちゃだめ!」
「は?」
「今のほたる待ち受けにする。こっちむいて!」
「お願いですからどうか口を閉じて頂けませんか?」

「…クダリ、ほたる様?」


聞き覚えのある声に振り向くと、マスターの執務室のある方向からやってきたであろうノボリさんが立ち止まって私達を見ていた。グッドタイミング、クダリさんを連れてってもらおう。


「ノボリさんちょうどよかったです。クダリさん連れてってくれませんか?…ノボリさん?」
「……」


ノボリさんから返事はない。どうやらノボリさんは私の顔…というよりもう少し下、口元辺りを見て硬直しているようだった。しまった、クダリさんのどうでもいい話に付き合ってまだしまいまだ拭ってなかった。ノボリさんてちょっと潔癖症っぽいしだらしなく口から歯磨き粉垂らしてるのは見るに堪えない光景だったのかもしれない。


「すみませんすぐ拭きま、」
「ックダリィイ!!ほたる様の口元のあれが!何なのか!説明して頂きましょうかァア!!」

「…………ノボリさん、」
「ね、男なんてこんなもんだよほたる」


ノボリさん、信じてたのに。私はノボリさんに胸倉を捕まれているクダリさんを遠い目で見ながら、手で口元を拭った。

…あ、昼休み終わる。



***

実際本物と歯磨き粉じゃ間違えようがないですけどネタという事で(笑)





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