バトルサブウェイにプラズマ団が現れた時、ああやっぱりなあと冷静に考えている自分がいた。ヒウンシティにプラズマ団が現れた事は耳に入っていたし、彼等の目的を聞く限り此処バトルサブウェイは恰好の的であると思っていたからだ。でもなんとなく予想はついていたとはいえ何時現れるか分からない相手の為にトレインを運休するわけにはいかないし、ぼくとノボリに出来る事はセキュリティを強化して、駅員の皆にもしなにかあった時にはお客さんを逃がす事を第一に考えるようにと伝えるだけだった。

そしていざ襲撃の連絡を受けたぼくは、ノボリと連絡を取り合いながらお客さんをホームの外へ促しつつ、プラズマ団のしたっぱを倒していった。どうやらしたっぱばかりで襲撃してきたらしく、手応えも何もあったものじゃない。舐められたものだよね。とはいえプラズマ団の被害にあったお客さんも少なからずいるはずで、一人でもサブウェイステーションから出すわけにはいかない。

最初にダブルトレイン、次にスーパーダブルトレインを見て回り、カナワ行きのホームに着いた時、隅っこで小さくうずくまっているほたるを見て、心臓が止まるかと思った。どうして逃げてないのと聞けば足を怪我してるみたいで血の気が引いた。驚いて小さな肩を掴んだ所で、ぼくは硬直してしまった。何時如何なる時も常に真顔を突き通していたほたるが、涙を流していた。プラズマ団は、あれ程お互いを信頼し合っていたほたるとゾロアさえをも引き離したのだ。ゾロアの名前を呼びながら泣きじゃくるほたるに、ぼくは自分の中で何かがプツンと切れる音を聞いた。



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「見つけたぞサブウェイマスター!お前のポケモンを解放しろ!」


ほたるとデンチュラと別れてわりとすぐ、どうやらぼく達マスターを探していたようでプラズマ団の方からぼくの前に現れてくれた。水色の独特なユニフォームにこの台詞、間違いない。


「…きみたち、プラズマ団だよね?」
「だったらどうした!」
「きみたちがトレーナーから取り上げたモンスターボール、返してほしいんだけど」


ぼくはついてる。目の前にいるプラズマ団は白い大きな袋を持っていた。恐らく、あの袋にはトレーナーから奪ったモンスターボールが入っている。ほたるのゾロアも恐らくあそこにいるはずだ。ぼくの言葉を聞いて、プラズマ団はちゃんちゃらおかしいとでも言うように鼻で笑った。気分が悪い。


「ふざけるな、我々は愚かな人間からポケモンを解放しようとしているんだぞ」
「ふざけてるのきみたちだよね」


ぼくはモンスターボールを投げてシビルドンを出した。ミネズミを従えていたしたっぱは、シビルドンとミネズミの大きさの違いに怯んだみたいで顔色が変わった。


「ぼく今すごく怒ってる」
「何っ、」
「きみたちの考えはきみたちの勝手なエゴだよ。それを押しつけてトレーナーからポケモンを取るなんて許せない。…それに、ほたるを泣かせたことは、もっともっと許せない」


自分でもびっくりするくらい低い声が出た。だってぼく、本当に怒ってるんだよ。尋常じゃない雰囲気のぼくを見て、プラズマ団のしたっぱは顔を真っ青にして尻餅をついた。その拍子に手に彼が持っていた袋が滑り落ち、中に入っていたモンスターボールがけたたましい音を立てて周りに散らばった。…この中のどれかに、ほたるのゾロアがいるはず。ぼくはカツカツと靴を鳴らして近付いていく。けどプラズマ団は動かなかった。いや、動けなかったのかな。どっちでもいいけど。

好き勝手してくれたけど、もう全部おしまい。ゾロアも他のポケモンも、ぼくが大好きないつものほたるも全部、


「返してもらうから」



23.日常を取り戻す

※クダリの台詞以外の独白は読みにくい為意図的に漢字を多く使用しています。




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