「すまないな、柱間……」

「いや構わん。それにしても…やっとお前にオレの思いが伝わったと思うと…本当に嬉しいぞ」


「フン……お前は相変わらず変わらないな…」



―あれから、オレと柱間は和解をし、正式にうちはと千手が協定を結ぶ事を約束した。

そして今、柱間はオレに肩を貸して、屋敷へと向かっていた。昔のように友人として奴と接することは久方ぶりだと思っていると、柱間はいきなり里作りの話を始めた。
本当に奴は変わっていないなと思い、自然と辺りを見渡して見ると、もう季節は春を迎え始めているのか、仄かに草木が生え始めていた。



「おい、聞いているのか! マダラ!」


「ああ、聞いているさ。」


柱間はふてくされながら、オレと共に丘を登って行くと……



「……あれは…」


「どうした? 柱間……」



オレは視線を柱間が見つめる方角へと変えると……


小夜が丘を下り、此方に向かっていたのだ。



「…マダラ!! ……マダラっ!!」



……オレは信じられなかった。

何故、小夜が屋敷を飛び出して、こんな所にいるのかと頭を巡らすと……


「っ……!」



その時、小夜は何かにつまずいたのか、体勢を崩し、転びそうになった瞬間、オレは柱間から離れて小夜の元へと走り、小夜の体を支えた。



「大丈夫か……?」



すると、小夜は顔を上げてオレを見つめた。
目には涙が沢山溜まり、嬉しそうな表情を浮かべる。



「……マダラ…貴方は生きていたのね……! 嗚呼、マダラ……私は…私は…」


「……小夜……」



小夜はオレを抱き締めると、オレの首筋に顔を埋めて泣いていた。
オレは小夜への思いが込み上げ、小夜を強く抱き締めた。



「……マダラ……愛しているわ。…貴方だけを……私は愛しているわ…」


「小夜……」



小夜はオレを一心に見つめて、涙を流し、オレの頬に触れながら愛していると告げた。
オレを心配して、宛もなくオレを探しに屋敷を飛び出したのかと思うと、かつての感情が蘇るように小夜を愛しく思えたのだった。
オレは小夜を再び抱き寄せると、遠くから加代の声が聞こえた。



「小夜様……小夜様…!!」



加代は小夜とオレの姿を見て、一目散に駆け寄ると息を切らして、その場にへたり込んだ。



「マダラ様……よくご無事で……! 嗚呼……本当に良かった……」


「すまないな、加代…。心配をかけたな」


「いえいえ……それよりも、小夜様…マダラ様にあの事を……」



加代は嬉しそうに小夜に話すと、小夜は頬を染めて、オレを見つめる。


「マダラ……私ね……貴方との子供を授かったの」


「……!?」



オレは驚いて、言葉が出なかった。



「本当なのか? それは……」


「ええ…そうよ。大分前から私は妊娠していたの」


その時、オレは小夜に何度も手を上げた事を思い出した。
小夜の体には……オレとの子がいるといたにも関わらず、オレは……。


「……ほぉ、あのマダラが父親になるのか! どんな子が産まれるか楽しみだな!」



すると、柱間がオレの肩を叩き豪快に笑っていた。
オレは居てもたってもいられず、小夜を抱き上げ屋敷に戻ろうとするが、肩が痛み、抱き上げる事が出来ない。



「マダラ、大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ……」


「大丈夫なわけがないだろう、マダラ! オレが背負ってやるから……」


「マダラ…心配しなくても大丈夫よ。私はゆっくり歩いて帰るから」


「だが、お前は妊娠しているんだぞ……」


「大丈夫よ! …心配してくれて、ありがとう」



小夜はかなり照れているのか、顔を背けてオレに言った。
相変わらず、素直に言えないのかと思わず苦笑してしまうが、そんな愛らしい妻を胸に引き寄せ、頭を撫でた。



―――…‥



オレと小夜は無事に屋敷に着き、柱間と次の交渉を終えた。そして、部下達を集め、休戦協定について述べ終わると、一先ずオレは自室で休んでいた。

女中に布団をひかせ、医療品を持ってこさせると、オレは布団に横になった。
すると、その時小夜がオレの部屋にやって来た。小夜は女中から医療品を受け取り、オレの側に座る。



「マダラ、あれから傷は平気?」


「大丈夫だ。医療忍者にも診てもらったからな」


「そう……。良かった……」


「小夜……少し聞いてもいいか?」



オレは起き上がり、小夜の手を握る。



「……何故お前は…あの時、イズナに…あのような事をした? 何故、オレを好きだと思うようになった?」



やはり、オレはそこが前から気になっていた。
確かに、小夜はオレを愛していると言ったが、いつも、その所が引っ掛かりオレは不安になっていたのだ。



「……私は確かに、イズナさんが好きだったわ。だけど、イズナさんには恋人がいると知って…私が失恋した時…貴方は私を愛していると必死に伝えてくれた事で……私は貴方に次第に惹かれていたのに……貴方の事…最初は大嫌いだったから、自分の思いを否定してイズナさんが好きだと思い込もうとしていたの…だから、イズナさんにあんなはしたない事をしてしまって……」



小夜はオレに謝ると、オレは寧ろ自分が如何に小夜を束縛していたのかという事に気付き、深く反省した。



「いや、オレの方こそすまなかった。お前は…政略結婚でオレの元に嫁いで来たのだ。イズナを好きになるのは…仕方のない事だった。なのに、オレは…お前の意思をねじ曲げ、無理矢理お前を犯した事もあった……。本当にすまなかった…。」



すると、小夜はオレの手を握り返し、ほのかに微笑む。



「……貴方からもらった…わすれなぐさ が貴方を好きになった、きっかけなの……マダラ…もう一度、わすれなぐさ を摘みに行きたいわ……」



その時、オレは小夜を優しく抱き寄せた。
オレの手中にある小夜の美しい髪、腕の中に小さく収まってしまうような華奢な体、香を焚いたような艶やかな匂い……小夜の全てにオレは惹かれていた。



「……マダラは…何故、私を好きになったの……?」

「……お前と初めて出会った時からだ。決して意思を曲げない、お前の真っ直ぐな心にオレは惹かれた……」


「……そうだったの? ふふっ、なんだか嬉しいわ……」


「気が強く、素直になれないのが玉に瑕だが」


「……もう! なんでそんな事を言うのよ!」



オレは小夜と共に笑っていると、幸せな気持ちになれた。
小夜とこうして分かり合えた事は…柱間のお陰かもしれないな……。



オレは小夜を布団の中へと引き寄せると、小夜をゆっくりと押し倒し、顔を近付けた。



「……マダラ…妊娠中は……その……」


「……ああ、分かっている。」



小夜は頬を赤くすると、目を細めて緊張しているようだった。



「……フッ、何を緊張している?」


「だって……なんだか…その……胸がドキドキして……」


「可愛い奴だな、お前は…」



オレは小夜の頬を撫でると、小夜は顔を背けた。



「……おい、顔を背けるな。此方に向けろ」


「……だって…! マダラが…そうやって、ぼそっと…格好良く言って……顔も……なんだかその……格好良いから……」



オレは小夜の誉め言葉を素直に嬉しく思い、小夜の体に密接しようとすると、小夜の腹はやはり少し膨らんでおり、子の存在が感じられたのだ。



「……オレの子が…ここにいるんだな……」


「……ええ。そうよ……」


オレは小夜の腹に触れると、小夜は嬉しそうにオレの手を握る。
これが家族なのだと、オレは改めて思いつつも、守る者がオレにも出来たのだと嬉しく思えたのだった。


再び、オレは小夜の顔を見つめると、久方ぶりに小夜に告げた。



「小夜……愛している……」



小夜は、その言葉が聞きたかったと言わんばかりに、涙を溜めながら笑みを浮かべた。



「マダラ……私も貴方を愛しているわ……大好きよ……」



その瞬間、オレは小夜に口付けをした。
久方ぶりの口付けだからか、小夜は必死になってオレに応えようと目を細め、オレは吸い付くように何度も角度を変えて……

小夜の愛を身に染みて感じていたのだった。



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