ユニフォーム着てると、かっこいいんだけどなあ。誰にも届かないようにと小さく呟いた言葉は呆気なく泉の耳に拾われてしまった。 「なんだそれ、」 「何って、そのまんまの意味だよ。」 言葉通りの、意味。グラウンドに立って、真っ白なユニフォームを泥だらけに汚して、一生懸命にボールを追いかける君たちはとってもかっこいいんだよって、そう思ったの。特にすきなのは、おっきなおっきなホームランを打ったあとの小さなガッツポーズ。応援席に向かって、ほんのすこし緩んだ、けれどもびっくりするほどかっこいい顔で拳をあげられた日にはときめかないはずもなく。あがる、小さなかわいい悲鳴。 「別に服が変わったって何もかわんねえだろ?」 「大違いだよ!」 なにが、なんて、多分彼らがいちばんよくわかってるはずなのに。だってそうでしょ、君らの気持ちが違うでしょ。その野球に対する真剣な気持ちが伝わってくる瞬間に女の子はぐっときちゃうものだ。 「普段はこんななのになあ…」 「オメーは素直に人を褒めらンねえのか。」 「だって普段がそんなにかっこよくないのは事実でしょ?」 「……てい。」 「いだっ!」 襲いかかる泉のデコピンは私の額にクリーンヒット!じわり滲む涙がその衝撃を物語って。いつにもまして不機嫌そうな泉に、でもね、と言葉を続けよう。 「私はそんないつもの泉もかっこいいとか思っちゃうんですよ。」 「………それはドーモ。」 「ねえねえ、悪いところもぜんぶひっくるめてすきだよって言ってくれる彼女とかほしくない?」 「回りくどいやつは遠慮しときます。」 「泉はわがままだなあ。」 すきだよの一言が言えたなら、こんなふうに遠回りしてないのに。そこのところのオトメゴコロをわかってくれない辺りさすが泉というところか。 「ところで今度の試合、好きなやつに応援に来てほしいとか思っちゃってんだけど。」 お前、来るか?なんて泉もよっぽど回りくどい。クスクス笑いながら当たり前じゃん、って泉に抱きついて見せるのだ。いつきっと、言葉にするね。 (150603)お引越し . |