ーー雨は、嫌いだ
甲板で、全身に水を引っ切り無しに浴びていた。
「ぎゃああぁっ!」
不可抗力で気怠くなる身体に嫌気が差しながらも攻撃の手を弛めず追撃を加えると、まともに喰らったそいつは情けない悲鳴を上げて海へと転落していった。
身丈程もある長刀を事務的といえる動きで捌く間にも、募っていく不機嫌。
苛立ちのまま振り切った刀は背後にいた相手を鋭利に斬り裂いたらしい。
つんざく断末魔が耳障りに至近距離でするものだから、もう一度刀を突き立ててやった。
顰蹙しながら灰色の空を仰いでも、空は雨を注ぎ続けている。
恨めしげに睨み付けても埒が明かない。
視線を戻して、ゆっくりと足下の息絶えた背に真っ直ぐ突き刺さる愛刀を引き抜いた。
「この野郎っ、よくも……!!」
背後から届く怒声。続いて複数の足音。
自分を取り囲む海賊共を意に介せず、刀を伝う水滴が赤を溶かし込んで落ちていく様をただ、見ていた。
「おいっ、……!?」
振り向きざまに紅い雫を払えば、金属の輝きを取り戻す刃。其れを逆手に取って構える。
「さァ……次はどいつだ?」
不機嫌そのままに、嗤った。
乱舞する絶望のharmony
(奏でろ、不協和音の叫びを)