鋭く冴える、銀灰の瞳。
荒々しい動と粛々とした静を秘めながらも、
二つの正反対を併せ持つ揺るがない双眸。
其処に、絶対的な強さがあった。
船長は、時折その色をくすませる。
何かを見ているのか、何かを思案しているのか。
知り様もないことだ。
知っているのは、何物も関与できないこの時間のことだけ。
それがひどく、もどかしいのだ。
閉ざされた瞼裏で、きっと今も瞳はくすんでいるというのに。
ーー何を、考えてるんですか
小さな、身震いをした。
寒気でも恐怖でもない、得体の知れない気味悪さに、本能的に鳥肌が立つ。
ーーわからない
ずっと近い所に、誰よりも長く居た。
誰よりも見てきた。
僅かな表情の動き一つで、伝わりにくいその感情がなんとなく察せるまでになった。
それなのに。
透明な無表情に潜む感情を読むことだけが、
出来ない。
このくすんだ色は、硬い光は、全てを遮断してしまう。
船長の見据えるものは、何なのか。
何処に、本心があるのか。
時折、得体の知れない不安が首を擡げ身体を這い回る。締め付ける。
その度に、自分は恐怖する。
「……、」
囁きに近い呟きを聞いた気がした。
逸らしていた視線と思考を反射的に目の前の横顔に戻すと、薄く開いた目が覘いていた。
‘‘ 雨が降るのか ”
そう、口許が動いた気がする。
億劫気に押し上げられた瞼から覗く無機質な瞳は、更にどこか色味を失くしていた。
生気の色、といった根本的なものが、欠けている。
「キャプテン!」
微動だにしない船長にいい加減焦れたのだろう。
一度は部屋を出たものの留まっていたクルーの一人が答を急かした。
「…あァ」
わかってる、早く潜行しろ
それだけ告げられ、船室を勢いよく飛び出て行ったクルーの後ろ姿からは、
「アイアイっ、キャプテン!」
元気一杯、といった体の返事が前方から遅れて聞こえた。
二度目の嘆息を吐きながら、
自分も持ち場へ戻ることにして其処を後にした。
刀と帽子に手を伸ばす腕を、目の端に捉えて。
動き出したKing
(今回の嵐はでかくなりそうだ)