02



鋭く冴える、銀灰の瞳。

荒々しい動と粛々とした静を秘めながらも、
二つの正反対を併せ持つ揺るがない双眸。

其処に、絶対的な強さがあった。












船長は、時折その色をくすませる。

何かを見ているのか、何かを思案しているのか。

知り様もないことだ。
知っているのは、何物も関与できないこの時間のことだけ。



それがひどく、もどかしいのだ。





閉ざされた瞼裏で、きっと今も瞳はくすんでいるというのに。






ーー何を、考えてるんですか







小さな、身震いをした。

寒気でも恐怖でもない、得体の知れない気味悪さに、本能的に鳥肌が立つ。




ーーわからない




ずっと近い所に、誰よりも長く居た。
誰よりも見てきた。
僅かな表情の動き一つで、伝わりにくいその感情がなんとなく察せるまでになった。



それなのに。



透明な無表情に潜む感情を読むことだけが、
出来ない。

このくすんだ色は、硬い光は、全てを遮断してしまう。






船長の見据えるものは、何なのか。

何処に、本心があるのか。






時折、得体の知れない不安が首を擡げ身体を這い回る。締め付ける。

その度に、自分は恐怖する。







「……、」






囁きに近い呟きを聞いた気がした。

逸らしていた視線と思考を反射的に目の前の横顔に戻すと、薄く開いた目が覘いていた。







‘‘ 雨が降るのか ”






そう、口許が動いた気がする。

億劫気に押し上げられた瞼から覗く無機質な瞳は、更にどこか色味を失くしていた。
生気の色、といった根本的なものが、欠けている。



「キャプテン!」



微動だにしない船長にいい加減焦れたのだろう。
一度は部屋を出たものの留まっていたクルーの一人が答を急かした。



「…あァ」



わかってる、早く潜行しろ



それだけ告げられ、船室を勢いよく飛び出て行ったクルーの後ろ姿からは、



「アイアイっ、キャプテン!」



元気一杯、といった体の返事が前方から遅れて聞こえた。


二度目の嘆息を吐きながら、
自分も持ち場へ戻ることにして其処を後にした。


刀と帽子に手を伸ばす腕を、目の端に捉えて。






動き出したKing





(今回の嵐はでかくなりそうだ)



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くうはく
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テーマ「人外ファンタジー」
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