「せっかく勉強時間割いてまで作ってきてくれたんだから食べてあげなよ!」
「そーそー、あの子泣いてたんだよ?」

あー、煩い。先程から俺の席の周りに群がってキャンキャンとよく吠える女が2人。何故こんな状況になったかと言うと、俺の中ではまあよくある話だ。ある女子が俺にガトーショコラを作ってきたが、俺はそれを頑として受け取らなかった。理由は簡単、俺が甘いものが嫌いだからだ。それを知らずにガトーショコラを押し付けようとするその女子に、少々キツい言葉と共にそれを突き返した。そしたら面倒なことにその女子が泣いた、まぁそんなところだ。そして女子とは迷惑極まりない生き物で、当事者ではなくその周りの奴が妙に俺を責めてくるのだ。関係無い奴等には口を出して欲しくないと言うのがこいつらにはわからないのだろうか。いや、わかっていたらこんなことはしないだろうが。俺は早々に聞く気が失せ、携帯を開き暇潰しに倉間にメールをする事にした。と、途端に更に騒ぐ女2人。いい加減自分の席に帰ったらどうだろうか。クラスメイトに盛大な迷惑がかかっていることにそろそろ気付いたらどうなんだ。

「ねぇ、邪魔。そこ私の席。」

俺がメールの送信ボタンを押すと同時に凛とした声が横から響いた。顔を見なくてもわかる、隣の席のなまえだ。なまえは誰とも絡まずいつも1人で弁当を食べたりする、いわゆる一匹狼のようなやつだった。それでも話し掛ければ普通に会話するし(滅多に笑わないが)、メールアドレスも交換した(一度もメールはしたことは無いが)。そんな彼女からの予想外の助け船に内心驚きつつも女2人を見ると不機嫌そうに眉根を寄せながらも、泣いている女子の方へ戻っていった。それを見届けると何事も無かったように自分の席に腰を掛けるなまえに、俺は素直に「ありがとな」とお礼を伝えた。なまえは視線だけをこちらに向けて「別に、座るのに邪魔だっただけ」と呟いた。彼女らしいといえば彼女らしい。

「あ、そうだ」

ふとなまえが思い出したようにポケットを漁り、上品な深緑色の包装紙に包まれた小さなお菓子を取り出した。なんとなく中身が分かった俺は先程の出来事を思い出して無意識に眉間に皺を寄せていたと思う。そんな俺に気付きながらスルーした彼女は淡々と俺に話し掛ける。

「もらったけど、私食べないから。あげる」
「俺、甘いものは…」
「カカオ72%のチョコ。予想以上に苦いよ」
「あ、おい…」

そう言って俺の手を取り無理矢理チョコを握らせてから、なまえは机に突っ伏して眠り始めた。全くマイペースなやつである。俺は今しがたなまえに押し付けられたカカオ72%やらのチョコを口に入れ、いつの間にか来ていた倉間からのメールに返事を書き始めた。うん、確かに予想以上に苦い。


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2012.05.16





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