※not夢



僕はいったい、どうすればいいんだろうか。

シロガネ山山頂はいつも通り吹雪が吹いていて、一面の銀世界。僕は今日もここで挑戦者を待ち続けている。どれ程時間がたったのかなんてもうわからない。
僕はひたすら僕を倒してくれる人を、ただ待ち続ける。

「レッドさん…ですか?」

後ろから聞こえた声に振り向き、声の主を確認する。
まだ幼い子だったけれど、ポケモンとの強い絆を感じた。僕も昔はあんな目をしていたのかな。今となってはもうわからないことだけど。
僕は特徴的な前髪をした男の子に近づき、「…バトル?」と問い掛ける。声を出すのはなんだか久しぶりで、少し掠れた気がした。

「はい!トレーナーの頂点と言われるレッドさんとバトル出来るなんて光栄です!」

男の子の言葉に僕はあからさまに顔をしかめてしまった。彼が気付いてるかは謎だけど。
挑戦者や町の人みんながいう「原点で頂点」のレッドがどんなものか僕にはわからない。違うんだ、僕はそんな大層なものじゃないんだ。僕はただ熱くて楽しいバトルがしたかっただけなんだ。

「…違う」
「え?」
「…僕はそんなんじゃない」

みんなが求める頂点なレッドってなに?原点なレッドってなに?生ける伝説のレッドってなに?世界を救ったヒーローのレッドってなに?僕はどうしなきゃいけないの?みんなのいう「原点で頂点」なレッドってどういうことなの?
僕はただ、

「楽しいバトルがしたかっただけなのに」

いつもと変わらず吹き続ける吹雪が今日はやけに寒く感じた。




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けっこうお気に入りだったので前のサイトから持ってきました。肩書きが重く感じるレッドさん。


2011.10.16

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