「なまえ、好きだ」
「私もグリーンが好きだよ」
「…本当か?」
「だってグリーンは大事な幼なじみじゃない」
「……はぁ…」

もうこれで何回目になるだろうか。俺が好きだと言ってもなまえは恋愛の好きとは受け取らず、幼なじみとしての好きだと受け取ってしまう。鈍いにも程があるだろ、なまえのやつ。やっぱり世間で言われているように、幼なじみの関係から恋人に進展するのは難しいのだろうか。楽しそうにゲームをするなまえの横でひとりで頭を抱えた。

「また負けた!もう一回…」
「もう23時半だぞ。いい加減帰れ」
「えーグリーン酷い」
「いいからさっさと帰ってくれよ…」

俺のベッドの上で駄々をこねるなまえは風呂上がりのようで、動く度にシャンプーの甘い香りがした。部屋着から見える白い太ももや鎖骨が目に毒だ。自分で考えて何を見ているんだと思ったけど、好きな子だから意識して当たり前だと自分に言い聞かせた。余計なことは考えないようにしよう。今はなまえを自分の部屋に帰らせるのが先決だ。未だに駄々をこねるなまえを親のように叱咤する。

「いくら明日が休みでも早寝早起きは基本だろ、はやく部屋に戻れ」
「グリーンお母さんみたい」
「誰がお前のお母さんだ、いいからさっさと帰らねえとおばさんが心配するぞ」
「大丈夫だよ、今日お父さんもお母さんも出張でいないから」

なまえはそういうと顔の横でピースを作って見せた。話を聞いている限り、なまえは今家でひとりらしい。昔はなまえの親が居ない時はうちで預かってレッドも呼んで3人で寝たりもしたが、成長して自分のことは自分で出来るようになった今、それは無くなった。俺達もそれを当たり前のように受け止めていたし、何より年頃の男女が一つ屋根の下で寝るというわけにもいかないだろうと思っていた。だからなまえがうちに泊まりに来るなんて最近はまったく無かったから、家でひとりだったなんて思っても見なかった。成る程、今ここに居るのはそういう理由か。

「お前、家にひとりなのが寂しいんだろ?」
「!い、いや、そんなわけないじゃん!だってもう私達小さい子供じゃないんだし!ひとりでも全然寂しくない!」
「そうか、だったら家でひとりで寝るんだな。ほら帰るぞ」
「ちょちょちょ!ストップストップ!」

俺がなまえを俵担ぎして家まで届けようとすると、彼女は慌て静止をかけてきた。俺はなまえをまたベッドにおろし、ふて腐れてそっぽを向いているなまえに深いため息をついてから問いかけた。

「帰ってひとりで寂しく寝るか、俺の家に泊まるか、どっちだ?」

なまえはむぅと唸って返事を考えていた。それもそうだ、ここではいと肯定すれば家でひとりなのが寂しいと思っていることを認めることになる。だからといって断れば、今日は家にひとりぼっちで寂しく寝るはめになる。なまえはたっぷり時間をかけて考えてから、小さな声で答えを紡ぎ出した。

「…今日だけ、と、泊まらせて…ください」
「わかった。つーかなんで敬語なんだよ」
「え?なんとなく…?」

なまえは俺があっさり宿泊を許可した事に加え、ひとりが寂しいことをからかわなかったことに驚いているようで、真ん丸くした目を数回ぱちぱちさせてから、ありがとうと呟いた。好きなやつにこんな可愛らしい頼み事をされて断るやつはまずいないだろう。もし居たらそいつは俺の常識を越えた存在になりうる。

「ほら、俺のベッド使っていいからさっさと寝ろよ」
「えー、せっかくだし久しぶりに一緒に寝ようよグリーン!」
「うわっ!お前なあ…!」


俺の理性を保つという努力を知らないなまえは遠慮無しに俺をベッドに引き込んだ。隣で寝転んでいるなまえの髪の毛から至近距離でシャンプーの甘い香りがして、俺はくらりと目眩がした。頑張れ、俺。

「おやすみグリーン、また明日」
「…あぁ、おやすみ」

すぐに寝息をたて始めたなまえに俺は背を向けて目をキツく閉じ、余計なことを考えないようにして一晩過ごすのであった。




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思春期様に参加させて頂きました。素敵な企画をありがとうございます!


2012.05.01

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