あの大きな手で痛いぐらいにがしがし頭を撫でられるのが好きだった。彼の手はごつくてまめだらけのキーパーの手でお世辞にも綺麗な手とは言えなかったけど、それでも温かくて大きなその手で撫でられるのが好きだった。けどいつからか彼の隣には誰が見ても綺麗だとわかる女の子が居るようになって、撫でられる機会は少なくなった。それどころか話すこと自体無くなっていった。仕方がなかった、あんな幸せそうな笑顔で笑う彼は初めて見たから。試合に勝った時の幸せそうな笑顔はたくさん見てきたけど彼女と2人で居るときの笑顔とは違う気がして、とても入り込める雰囲気ではなかった。

「なに難しい顔してるんだ、なまえ?」
「何でもないよ、守。」
「そうか?悩みがあるんならいつでも相談してくれよな!」
「ありがと。それにしても、なんだか実感わかないなあ」
「実は俺も実感わいてないんだ。あー今から緊張してきた…!」
「何言ってんの、式は明日でしょ?旦那がそんなんだと嫁も苦労するだろうね」
「それは大丈夫だ、夏未は俺が絶対に幸せにするからな!」
「…幸せそうで何よりだよ」

眩しいくらいの笑顔を浮かべる守を見て、いくら思い続けても届かないことはあるのだと身をもって知った。私の心の中では中学二年の時のままで止まっているけど、彼はどんどん前に進んで行っている。私はその後ろ姿を眺めることしか出来ない。守は明日、夏未と結婚式をあげる。



___________



title:告別
2012.04.07

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -