※ちょっぴりグロテスク

「あ゙ーづーいー!」
「ほんと暑いっすねー…ちょっとなまえ先輩アイス買ってきてくださいよ、もちろん先輩の奢りで」
「断る。なんで私がヒビキにアイス奢らなきゃいけないのよ…うあ゙ー暑いーとけるー動きたくないー!」
「かわいい後輩の頼みッスよ!?いいんスかスルーして!!」
「どこにかわいい後輩がいるんだろう少なくとも私の視界にはいないよ」
「先輩ひどい」

茹だるような暑さの中、暇な僕達は小さい頃にコトネとよく遊んでいた公園に来ていた。ベンチに座り時計を確認すると12時32分。ちょうどいちばん暑い時間帯だ。なまえ先輩は草むらから出てきた本来ならジョウトにはいない筈のエネコを抱き上げてもふもふもふもふ、エネコが嫌そうな顔をするぐらい撫で回していた。ちょっとエネコが羨ましいとか思ったけど絶対口には出せない。馬鹿にされるにちがいない。

「やっぱり夏は嫌いだな…」
「じゃあなまえ先輩は冬が好きなんスか?」
「やだよ冬寒いもん」
「結局どっちなんスか…僕は夏好きッスよ!アイスにスイカにかき氷に…」
「えー食べ物ばっかりじゃん」
「食べ物以外もありますよ!海にプールに花火大会にお祭りに…」
「お祭りかあ…。ヒビキ、今年の夏祭り一緒に行こっか」

先輩からそんな提案が出されるなんて珍しいことで、僕は一瞬「雪でも降るんじゃね?」と考えたが先輩の気が変わらないうちに返事をしようと、わたわたしながら「はい!」ととびきりの笑顔で答えた。先輩はエネコを撫でながら「絶対だからね」と言って微笑んだ。

「お祭り楽しみだね」
「そうっすね!ほら、夏は楽しいことたくさんあるんですよ先輩!」
「うーん…でもやっぱり夏は嫌いだな」

なまえ先輩がやけに真剣な表情でそう言うと同時にエネコが先輩の腕から飛び降りて、出口に向かって一直線に走っていった。先輩は「あ、待って私のエネコちゃん!」と言いながらだるそうにベンチを立ち、エネコを追っていく。

「動きたくないんじゃなかったんスか先輩」
「だってエネコってジョウトじゃ珍しいじゃん。捕まえておこうと思って」
「誰かの手持ちかもしれませんよ」
「そんなのボール投げてみないとわかんないよー!」

先輩は僕に背中を向けると小走りでエネコが去っていった方に走っていった。僕も先輩を追う為にベンチから立つと走って出口に向かった。

「先輩気を付けてくださいよー!」
「分かってるってー!大丈夫大丈夫ー!」

僕は出口で止まると笑顔でエネコを追いかけている先輩を見る。なんだか微笑ましい光景だ。先輩が信号を渡ろうと一歩踏み出した時に、気付いた。気付いてしまった。

信号が、赤い。

ヒヤリと背筋が冷えて急いで信号まで走って行き、先輩に向かって大声で叫んだ。

「ッ先輩!!止まって下さ …ッ!」

そこからは、全てがスローモーションのように見えた。言い切る前に聞いたことも無いような鈍い音が辺りに響いた。キキーッというトラックのブレーキ音がけたたましく鳴って、赤い尾をひきながらトラックが少し先で止まった。目の前に転々と転がっているのはさっきまで先輩だった筈の何かで、僕についてるのはほんの数秒前まで先輩の体を巡っていた血液で。

「…なまえ…せん、ぱい…?」

さっきまでそこで笑顔でエネコを追っていたはずの先輩はそこには居なくて、代わりにあるのは引き摺られたような赤い線。僕はくらりと目眩がしてその場に座り込んだ。信じたく、無かった。

「(嘘だ、こんな、こんなことがあってたまるか…)」

先輩の香りと鉄の匂いが辺りに充満する。事故に気付いた周りの人の悲鳴と蝉の鳴き声が混ざって辺りに木霊して、そんな周りの声をどこか遠くから聞いてるような感覚がして、僕は意識を失って、



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