俺は小さい頃から両親をはじめとした周りの人たちに可愛がられて、溢れんばかりの愛情を注がれて育てられてきたんだ。それは俺が美しかったからであって、もしここまで可愛くなかったらそれもなかったことは十分わかってるんだよ。で、今までこうやって愛を受けることしかしてこなかったから、俺はどう人を愛せばいいかわからないわけ。そもそも愛すってどういうことなんだろうね?俺が親衛隊の女の子達に向けてる感情は愛とはどこか違う気がするんだ。あぁ勿論だけどバダップやエスカバに向ける感情も愛ではないよ。本当に愛ってなんなんだろうね?君はわかる?なまえ。

ミストレのナルシストなマシンガントークを適当に聞き流しながら読んでいた本を閉じて余裕綽々な笑みを浮かべるミストレに向き直った。質問されてしまえば適当に流すのが私には出来ないことを知ってやっているんだからミストレは性格が悪い。私は少し考えてから口を開いた。

「一概に愛と言っても色んな愛がありますからね。友愛に敬愛、はたまた親愛。まぁ愛と聞いて最初に浮かべるのは恋愛の愛なのでしょうけど」
「じゃあ俺がバダップやエスカバに向ける感情は?」
「愛で言うなら友愛かと」
「親に向ける感情は?」
「親愛じゃないですか」
「親衛隊に向ける感情は?」
「それはそもそも愛なのかよくわからないのでなんとも」
「じゃあ、なまえに向けたこの感情は?」

そう言ってミストレは私の顎を捉え少し上げると優しくキスを落としてきた。普段は優しさの欠片も無いくせにこういう時はちゃんと優しいところに腹がたつ。私がどう答えるかわかってて質問してくるなんて、やっぱり彼は性格が悪い。

「恋愛の愛、じゃないですか」

私がそう答えるとミストレは嬉しそうに笑って、私の髪の毛をいじりながら「当たり」と答えた。人をどう愛せばいいのかわからないとか言っていたくせに手探りの愛情表現は全部私を喜ばせるようなことばかりで、私は心の中で素直に喜んだ。


「でもそれは女誑しをやめてから言ってくださいね」
「なまえと付き合ってからはもうしてないよ」
「どうだか」


___________


(良くも悪くも愛まみれ)
title:告別
2012.04.04


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