サッカーをやっている彼にとって足は凄く大事な物であり、そうで無くとも人間は足に何らかの問題があれば日常生活に支障を来すということには違いなかった。今まで彼は人生のほとんどをサッカーに注いできたと言っても過言では無いぐらい、サッカーを愛して生きてきた。エイリア石に操られていた時もあったけど、晴矢は変わらずにただボールを蹴り続けてきた。彼がサッカーに向ける愛情は誰にも負けないんじゃないかってぐらいに。だからこそ、それを奪われた時のショックは凄まじい物だったんじゃないだろうか。
練習試合で派手に転んだ晴矢はそのまま病院に運ばれ、お医者さんに全治2ヶ月の骨折という大怪我をしていることを明かされた。晴矢はただ無表情で俯いてそれを聞いていて、お医者さんが病室から去るとベッドに腰掛けている私にぽつり、と小さな声で呟いた。

「…俺、また捨てられんのかな?」

今にも泣き出しそうな笑顔で呟いた彼を私は力一杯抱き締めた。その表情のまま晴矢は苦しいだろなまえ、と私の背中を軽くたたいた。そう言った晴矢の声はいつもみたいに自信に溢れた声ではなく弱々しく震えた声で、その声を聞いて私は更に胸が締め付けられた。

「大丈夫。風介も照美もチャンスゥも、誰も晴矢を見捨てたりなんかしないから、だから」

泣かないで。彼は私に言われて初めて自分が涙を流していることに気が付いたようで、慌て震える手の甲で未だに目から溢れ出る涙をごしごしと拭っていた。擦ったせいと泣いたせいで赤く腫れている瞼を見て、晴矢は情けないな俺、と自嘲染みた笑いを浮かべた。私はただ彼を抱き締めることしか出来なかった。



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title by 告別
2012.03.22

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