短編・企画 | ナノ
海月姫転生



「三四さん!私、次の日曜日、デモに参加するのでこの衣装を作ってほしいのですが!!」
「・・・ぇ、デモですか、、てか、月光仮面・・!?」
「あ、間違えました。それは私がもう準備したので、こっちです。“キンキちゃん”です。ばんば先輩が着るんですけれども!」

ばんば先輩・・、
あぁ・・あの天水館のアフロの人か・・

「キンキちゃんですか?よく知らないですが、、でも、月光仮面とどういう関係が・・?」
「私、昔からデモには目がなくてですね。それにこれでも鯉淵先生のおかかえ運転手をしている身なので、大きく顔は出せないのですよ!!」

じゃあ、出るなよ

「そうだ!三四さんも一緒にどうですか?この間作っていたメイド服とか」


作成中の衣装は全てクローゼットに入れていたのに・・・
いつの間に部屋のクローゼット開けたんだ・・ッッ?!


「遠慮します」と、即答すれば「残念です」とポーカーフェイスを崩さずに言った花森さん。
この人との会話は、相変わらず疲れるな・・と溜め息をつく私の手をとり「さぁ!そうと決まれば布屋へ!!大丈夫、経費で落ちますから」と、無理やりいつものベンツに乗せられた。
今日だけで何回溜め息をついただろうか、、と、思いつつ私は、また一つ溜め息をついた。



* * *



前世の記憶をもったままこの世に生を受けた私は、順調に青春時代を謳歌した。
そして、社会人になりしばらくした頃、私は仕事に趣味に大変満足した生活を送っている。

何の趣味かって?

仮装とかいて“コスプレ”と読む。
そう、私はコスプレイヤーなのである。

まぁ、見た目は一般人と変わりのない身なりをしているから!
いわゆる隠れオタみたいな感じだ。

そんな私がこんな(残念)イケメンの花森さんと一緒なのには訳がある。

そもそもの私と花森さんとの出会いはなんだったかというと、、あれは、1ヶ月前の夜に遡る。


仕事帰り、コスプレ友達が勤めているいつもの飲み屋で飲んでいると、私の隣に座る男性がいた。
それが花森さんだった。
花森さんは、兎に角しつこく私に絡んで(口説いて)きた。
まぁ、かっこよかったし、お酒も入っていたりで私も気分が良かったんだ、、
今考えると、あの頃の自分を殴りたい。

そんな私達は、仲良くなったので名刺を交換をした。

その時だ・・・

酔いもあり、私は手を滑らせて名刺ケースを落としてしまった。


音をたてて落ちるケース・・・
散らばる名刺・・・

・・・め、名・・刺・・・ッッ!!


「・・・ぁ、、」
「おや?この可愛らしい写真は・・あなたですか?」
「・・・・・」


し、しまった、、

仕事用の名刺ケースと間違えて、コス用の名刺ケース持って来てたのね・・ッッ!!
仕事で使わなくて良かった・・・!!


・・・の前に、

マジで、穴を掘って隠れたい・・
ましてや今日初めて会った男の人!恥ずかしさマックスである・・・!

しかも、よりによってコス用名刺の画像が、初音●クだったりするから、マジデ死にたい・・・。
せめて、男装の時のにすればよかったかも・・あれは、私だと気付かれないみたいだし、、

いやいや、どちらにしろもう遅い・・。


それからだ。。

私の何をどう気に入ってしまったのか、花森さんとはよく飲むようになり、、
最近は、お互いののマンションの自室で宅飲みまでする“お友達”になってしまった。


断じて“彼氏”ではない。
ニャンニャン的なこともしていない。

何度か、危機的状況はあったけれども、さらりと大人の対応で回避してきていた。

なんで、断れないかって・・?
・・・んなの、花森さんに私が「コスプレ好き」という墓まで持っていきたい秘密を握っているからです・・!!



ばんば先輩の居る天水館は、私の住んでいるマンションからも割と近いところに有り、住民の尼〜ずともお知り合いで仲良くしてもらっている。
特に、まやや様とは、三国志の話が分かる相手ということで仲良くさせてもらっていた。
私も、三国志系のコスをするとき資料をよく借りているしね。

先日のファッションショーでは、非力ながらもお手伝いはさせてもらった。
主にお針子だけれど・・。
ショー当日は、私が仕事で参加できなかったが、新聞にネットと、、あの盛り上がり方を見れば大成功だったんだなとわかった。


いつもの手芸屋で、キンキちゃんの写真を見ながら布の色と素材を選ぶ。
まぁ、、ばんば先輩なら2メートルあれば十分足りるかな、、もし余ったらまた何かに使えばいいし。
支払いと買った物は、すべて花森さんに任せて「さぁ、皆さんに会いに行きましょう」と、再び引きずられるようにしてベンツに乗せられた。


「あら、三四じゃない。いらっしゃい」
「お邪魔します、千絵子さん。これ、差し入れです。」
「む・・マカロン!!」
「当たりです、ばんば先輩。ぁ、ばんば先輩の衣装今からすぐに作りますね。色はこれで大丈夫ですか?」
「ばっちりだ!」
「よし、じゃぁ・・型紙作って・・」






天水館でデモ部隊を見送った私は、久しぶりにクローゼットの中にある衣装の製作をしていた。
いつも花森さんが飲みにくるから全然進まないんだ・・・。

でも、今日は邪魔者はいない・・!!
頑張って2着作るぞー・・!!




* * *




夢中になってミシンをカタカタ動かしていると、気が付けば夜になっていた。

なんとか、終わった・・・。
これで、次のイベントの合わせに間に合う。

軽く伸びをして、お腹空いたなー・・と呟くと、携帯が鳴った。
・・・この着信音は、花森さんだ・・

電話に出ると、案の定で・・・
彼が言う内容は「西麻布のダイニングレストランを予約してあるんですが来ませんか?来ますよね??」という、、、

これ、断れなくない・・?!

でも、お腹が空いていた私は断る理由が見つからなかったので、
以前、花森さんが買ってくれたドレスに着替えてお店を目指した。

花森さんが予約する店は大抵、ドレスコードが指定だから・・・。
たぶん、また高いところなんだろうな・・・。




お店に着いて、受付の人に案内してもらうとそこにいたのは、何故か石化した月海ちゃんと花森さんだった。


「ぇ、月海ちゃん?・・なんで石化して・・・」
「さすが三四さん、あまりに綺麗すぎて東京タワーが田無タワーにしか見えません・・」
「はいはい・・」
「さ、私たちの席はこちらです。行きましょう行きましょう」


と、私の腰に手を添えられて花森さんにエスコートされる私。
月海ちゃんのことは気になるけれど、、まずは、このすきっ腹を何とかしたい私は、急いで料理を食べて話しかけようと思った。






「君の瞳に乾杯」
「はい、乾杯。・・・でも、今日は大丈夫なんですか?ベンツ。」

私は、今日タクシーで来たから。
帰りもタクシーにしょうかな・・。
このドレスで電車乗るのキツイんだよね。

「僕は、大切なモノを他人には触らせたくないタイプなんです。車も、女性もね・・・」

こういう花森さんにも大分慣れたもので、私は近づく彼を軽くかわした。
しかし、今回はカップルシートだからあまり逃げ場はない・・。

料理まだかなー・・と背中をソファに預けながらオレンジジュースを飲んでいると、花森さんが覆いかぶさってきた。


って、おいこら・・
近いっつーの!!



「相変わらず、三四さんはつれないですね。私、結構真剣に口説いているんですよ?」
「はぁ・・」

そのまま近づいてくる花森さんに危機感は募るが、悟られないようにと必死にポーカーフェイスを保つ私。
その時、突然の突風が私たちの間を通って行った。

隣の席の料理が、私にぶつかりそうになり「ぁ、クリーニング代が・・」と頭をよぎった時、花森さんが私を抱きしめてガードしてくれた。


風がおさまり、ゆっくり顔を上げると、いつもばっちりとキメている花森さんの髪がぐしゃぐしゃに乱れていて「あなたが無事で良かった」と言われ、ホッとした表情をされた瞬間、、


なんだか凄くドキドキした・・・。



花森さんがかっこよく見えた瞬間だった。

おわり(オチ無し)



<あとがき&反省>
やっと書けた・・!!
海月姫で一番好きなのは、花森さんです・・!!
新刊発売で喜んでいたのに、、
読んだら、花森さん、、インド女性といい感じになっていてショックでした・・・orz
「ちょ・・!!お前、そこかわれ・・ッッ!!」
と、いう思いをぶつけました!!
最後が尻切れトンボだけれど、これ以上は勘弁してください。。

出来ることならば、もっと尼〜ずと絡みたかったな・・。




- 6 -


[*前] | [次#]
ページ:



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -