本日は、2月14日である。
そう、あのチョコレート会社の陰謀・・・失礼、女の子がソワソワするあの日である。

前日に、いつもの部屋のキッチンでチョコの湯煎からラッピングまで丁寧に丁寧に頑張った。
よって、今日はちょっと寝不足である。
でも、みんな毎年そんな感じよね。

なんたって、バレンタインだもんね！


取りあえず、仲の良い人には全部配るつもりです。
今年は、本命チョコは無いから女の子は赤いリボン、男の子は青いリボンと、中身は皆同じだけどラッピングだけ区別してみました。

「おはよう！アンジー、アリシア！！」

はい！と、綺麗にラッピングしたチョコを渡すと、キョトンとした顔の2人・・・。
「手作りで頑張 ってみました！」と、言うと、ますます戸惑った顔をする2人・・・。

・・・どうしたんだろ？

「・・ミヨ、今日は2月14日よ？」
「うん」
「・・・・2月14日て何の日か知っている？」
「勿論！・・ぁ、チャーリーとパーシーだ！！ゴメン、2人とも。先に行っているね！！」
「ぁ！ミヨッッ！！」

チャーリーとパーシーを見つけたので、「おーい！」と彼らを引き止めて、手提げから青いリボンのチョコレートを出して二人に渡した。

「・・ん？ミヨ、どうしたのコレ？？」
「あ、もしかして、日本のバレンタインか？」


・・・日本の？
パーシーが言う、「日本の」ってなんだ？？


「手作りなのです！」
「へー、でもなんで今日なんだ？」

困惑気味のチャーリーの後ろに、クララ先輩を発見した。
「じゃ、わたし、もう行くね！ホワイトデーよろしくお願いします！！」と言い残して、クララ先輩を見失わないうちに小走りで先輩を追いかけた。


「・・・ホワイトデー？ホワイトデーてなんだ・・？！」
「ホワイトデーは、3倍返しらしいよ、チャーリー。」
「・・・なんで、パーシーは分かるんだ？！」
「僕は、ミヨが居た日本についてちょっと興味持ったから・・。この間雑誌で読んだんだ」
「へぇ・・・」


アルバスと仲の良い先生方にも配ったし。
あとは、セドリックとまだ今日は見かけていない双子とかな。
リーには、さっき廊下ですれ違った時に渡した。またしても皆と同じ反応で、なんだかおかしいな、とさすがに思ってた。

「やぁ、ミヨ！珍しいね、廊下で会うなんて！！」
「・・ぁ、セドリック！！」

廊下で腕を組みながらムーと考えていると、前からセドリックがやって来た。
いつもは、約束もしていないのに図書室でよく会うから、、確かに廊下で会うなんて珍しいかも。

近づいて来たセドリックに、手提げから青いリボンのチョコを出して、「はい」と渡した。
「ミヨの手作り？嬉しいな！ありがとう！！」とニコニコしているセドリックがなんだか新鮮であった。
みんな、渡すときキョトンとした顔をするんだもん。


「・・セドリックは、普通だね」
「え？」
「チョコ渡すと、みんなは戸惑った顔したから・・。今日は、 バレンタインなのに・・」
「それは、、日本と違っt」
「セドー！クィディッチの練習始まるってさー！」
「見学行こうぜー！！」
「早く早くー！！」

セドリックが何か言いかけていたけれど、その言葉は3人の男の子の声で見事にかき消された。
あのネクタイの色はセドリックと同じハッフルパフ寮の色だ。
セドリックの友達だろうか。
3人の声を聞いた後、セドリックは、はぁ・・と小さく溜め息をついて頭を掻いた。


「・・・今行くよ！！ごめん、ミヨ。もう行かなくちゃ・・また図書室でね！」
「うん、」


セドリックは何を言いたかったのだろう・・？


「「ミヨ！」」
「ぁ、フレッドにジョージ！！」
「リーに聞いたけど、チョコ配っているんだって？俺たちにもくれよ！」
「勿論！」

セドリックと別れた後、少し廊下を歩くと双子が近づいて来た。
最後のチョコレート達を二人に渡すと、あんなにパンパンに膨らんでいた手提げがもう空っぽだ。


「サンキュー！」
「でも、なんでバレンタインの今日なんだ？手作りのチョコを渡すの。」
「だって、今日は女の子が男の子にチョコを渡して告白する日じゃない！」


告白、と言っても、本命の人限定だけどね。


「「・・・はぁ！？」」
「？」
「・・・聞いたか、相棒？」
「・・・ああ聞いた。じゃあ、ミヨは、俺たちに愛の告白でもするのか・・？」
「はぁ！？二人のは、義理チョコ！私、本命チョコは作ってないもん。」
「ギリチョコ？ホンメイチョコ？？俺、カエルチョコは知っているけれど・・それは聞いた事無いな・・」

・・・ダメだ、話が通じない・・・。
というか、そもそもバレンタインのこういうイベントて日本だけなのか！？
なんだか、そんな気がして来た・・・。


「・・・ちょっと聞きたいんだけど・・、イギリスのバレンタインてどんな感じなの・・？」
「こっちは、男が女にプレゼントする日だな。」
「・・・・」
「まぁ、恋人同士のイベントだよな？」
「そうだな。」


・・・そうだったんですね・・・・
じゃぁ、あれですね。
ホワイトデーも何も無いの決定ですね・・・。





＊　＊　＊





「・・・そういえば、ミヨ。あなた気がついてなかったと思うけど、今朝ミヨ宛にプレゼントが沢山来ていたわよ？」
「そんな、誕生日でもないし・・一体誰からかな・・」


アリシアに言われて部屋のドアへ向かうと、プレゼントであろう一輪の花が本当に沢山届いていた。
個々に付いていたカードを全て開けてみると、全て『あなたを愛する人より』の言葉が・・・。









今日は凄いカルチャーショックを受けた一日だった。

女の子が男の子にチョコを渡して告白するというバレンタインのイベントは、日本だけだったなんて・・・

しかも、ホワイトデーも日本だけだって・・・。
まぁ、確かに・・世界共通のイベントだったら、昨日も今日もホグワーツ中がカカオの香りでいっぱいだったに違いない・・。

はぁ・・と、溜め息をついてベッドに腰を下ろすと、「ニャー！」と、シキが口に加えていた野花を私の膝の上に置いてきた。
それを見たアリシアがクスクスと笑う。

「あら、シキはちゃんとバレンタインが分かっている みたいね」
「ホントだねー・・」
「ニャー」


シキの頭を撫でながら、「勉強になりました」と心の中で呟いた。