目を覚ますと、見たことのない立派な天井が広がっていた。
「ここは・・・?」と、呟きながら起き上がる。
手元を見ると、こちらもやっぱり立派な寝台に寝かせられていたようだ。
司馬昭と会話の途中からの記憶が曖昧だ・・。
「―――気が付いたか?」
男性の低い声が聞こえて、声の方へと視線を向けた。
天蓋の布をめくって顔を覗かせたのは、顔の左目に仮面をしている司馬師だった。
「司馬師・・様、、」
「・・・もう、子元とは呼んではくれぬのか・・」
「・・・・・」
どこか寂しそうに呟く彼は、昔のようにコロコロ表情を変えることなく、無表情でただこちらを見ていた。
そんな司馬師を見て、ズキリと胸が痛む。
私は、事情はなんであれ、蜀で亡命した身である。
もう二度と魏へと帰ることができないはずだった。
彼が目の前にいるということは、この立派な部屋は、彼の家・・もとい、城。
私は、寝台から起き上がりながら司馬師と視線を合わせた。
「どうして私は、ここにいるの・・ですか?」
「・・・・・」
相手は、幼馴染ではあれ身分は違う。
昔のように気軽にタメ口なんて出来ない。
「私は、蜀に亡命した身です。それに蜀の武将、夏候覇の・・」
「夏候覇なら、先の戦で死んだ。」
「・・・ぇ・・」
言葉が続かなかった。
夏候覇の照れくさそうに言ったあの顔がフラッシュバックする。
両手で顔を覆おうとすると、手首を強く引かれて気が付いたら司馬師の腕の中にいた。
昔は私の方が大きかったのに、しばらく会わない間に司馬師は背も高くなり男性の体つきになっていた。
離れようと腕を突っぱねるも、ビクともしない。
「もう、お前を縛るものはない。」と、耳元で囁かれて少し抱きしめる力を強められた。
「私は、昔の約束を果たす。お前は、私の妻になるのだ。」
「・・・司馬師様は――」
「そう呼ぶな。」
「・・・子元には、奥方様がいます。だから――」
「夏候徽は、側室だ。・・・それに元は、父が進めた縁談だったからな」
淡々と話す司馬師は、私を寝台に押し倒して両手を一つに顔の上に押さえつける。
「良いか、今日からお前は私の妻だ。お前に否は言わせない」
司馬師からプロポーズされたこの日。
私は、20歳の誕生日を迎えた。
<あとがき&反省>
うーん、どうしようかなーと思って。
やっぱり、ドロドロの展開はすっ飛ばそうかなって・・←(あんだけ言っていたのに;)
・・というか、『中編』と言っているのに何話になるんだよ!て感じになってきたし(笑)
サクサク行くはずだったんだけどなー・・。