無題 | ナノ
18歳



夏候覇こと、仲権の元でお世話になって早くも3年の月日が流れた。
彼は、蜀に亡命した身であるにも関わらず、もともとの人柄のせいなのか蜀の国の人から、とても信頼を得ていた。

・・・というか、可愛がられている・・?

他にも、近所の皆様や上司の武将の方々から頂く食べ物の数々・・
それに、私の衣服までも「娘のお古だけれどよかったら着て見て!」という、彼がよく行くお店の心優しいおばちゃんのお蔭ですべて賄っている。


昨年の春に仲権にプロポーズをされて、私は晴れて彼の「奥様」になった。
17歳で結婚とか、どこぞのヤンキーか!?と言われそうだが、、
この時代、むしろ私は遅い方である・・。
早い人は10歳で嫁いじゃったりするもの。


「それじゃあ三四、行ってくるぞ」
「はい、行ってらっしゃい。仲権様。」
「・・・・・・・ぁー、、三四。」
「はい?」
「いつも言うがその『仲権様』というの止めてくれねぇか?言われる柄じゃないし、、俺には、似合わないしさ!!」


自分で言ったよ、この人・・!!

にかっ!と、いつもの笑顔を浮かべた彼を見て、私は思わず噴き出してしまった。

ぁー、我慢してたんだけどなー・・。


「ぁ、笑ったな・・!!」
「ふふ、ごめんなさい。ぇーと、、仲権。」
「・・・・ぉう・・」
「いってらっしゃい!」


笑顔でそう言えば、ぎゅっと抱きしめてくる私の旦那様。
固い鎧を纏う彼の胸板は、とても冷たくて、でも火照った私の頬には丁度良く冷やしてくれた。
最後に私の頬に軽くキスをした仲権は、入口のところに置いてある兜を被って、馬の元に走って行った。


仲権を見送った後の私の仕事は、(小さいけれど)畑の手入れと、厩にいるもう一頭の馬のお世話(これが可愛いんだ・・!!)、それと掃除と洗濯と・・・まぁ、こんな感じ。

もともと魏に居た頃は、お店の他にも生活スペースでの家事の仕方をおかみさんから教えてもらっていたので、仲権と一緒に暮らすとなった時は慌てることはなかった。
火起こしとか大変だけれどね、慣れればどうてことない。

洗濯物を籠の中に入れて、私は近所の洗濯場まで歩いていく。
近所のおばちゃん達が「三四ちゃん〜!!こっちよ〜!!」と声を掛けてくれて、私はその近くまで行って腰を下ろした。

仲権同様、なんだかんだで私も近所のおばちゃんには可愛がられている。
もともと仕事上、年上の人の相手をしていたから慣れているというのもあるけれど、、

ここにいるおばちゃん達は、息子さんを戦で亡くした人が殆どで、娘を持つ人も早々に嫁がせてしまったとかで、、つまりは身近に若い人がいない。
それもあってか、私と仲権を実の子供のように可愛がってくれていた。


「あんれー、夏候覇様は、まーだ三四ちゃんと子作りせんのかい?」


・・・・ぇーと・・


「この御時世、いつ死ぬかもわからんしの。早く二人のお子が見たいわ」
「そうねー、夏候覇さまと三四ちゃんのお子だったら、きっと美人にもなるし美男子にもなるわね!!」
「早く見たいわね!!」
「・・・あははは」


そんな感じで、蜀での生活は全然苦じゃないです。


ここでの生活が幸せな反面、、魏での生活を思い出す。

私が居なくなってから、お店は大丈夫だろうか・・
店主におかみさん、従業員のみんなは元気でやっているだろうか・・・
15歳になってから司馬師は、パタリとお店に顔を見せなくなってしまった。
代わりに、3つ下の弟の司馬昭がよくお菓子を買いに来てくれたけれど・・・。

もともと、私と子元は身分が違っていた。
だから、結ばれるようなことは絶対になかった。

そう思うと、私は仲権と一緒になれて良かったのだと、、




・・・そう思う。




兄上である司馬師の命令で、戦場の下見を兼ねて通ったとある村。
村の女たちが川の周りで座り込み、洗濯をしていた。
いつもなら全く気にも留めず、すぐに視線を外すのだが、、なぜか一人の女から目が離れなかった・・・。


「・・・あ・・れ?・・三四姉・・?」


はっ!と思い、すぐに俺は、馬を走らせた。

三四姉が生きていた・・!!

その言葉だけが俺を走らせた。




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