まだ寒い二月。
決まった時間に、決まった部屋で考え事をするのが日課になっていた。

夕日が落ちる頃に縁側に座って、じっと考え事をするのだ。まだ寒いので、上着を羽織って手は袖の中にしまってじっとするだけ。たまにおねね様が来てくれて、二人で他愛もない話をしたり、女中とお話をするのが楽しい。

でも最近、もう一人同じことをする人が出てきた。
いつものように縁側に座っていると、少し離れたところにどかりと誰か座る音が聞こえた。でも、女中やおねね様なら必ず話しかけてくれるので、隣に座っている人が誰かも分からない。
かといって隣の人を盗み見ることもできない。なにせ知り合いがほとんどいないのだ。まして、男の人なんて目を合わせることすら少し怖いと思ってしまう。その隣に座っている人は、少し時間が立つとどこかに行ってしまうから、あまり気にしないことにしていた。

いつもなら考え事をして、隣なんて気にしないようにしているのに、今日はやたら視線を感じる。気のせいかもしてないけど、どうしても気になる。
かと言って隣も見れない。

そう、考えていると、隣の人がその場を立つ気配がした。いつものようにもうどこかへ行くのだろうと思っていると、その人はさっきより私の近くに来て座ってしまった。
私は離れようと、少しだけ反対方向へ体を動かした。
しかし、動くと隣の人も距離を詰めてくる。おかしいと思った頃にはもう逃げる場所がなかった。今日はもう帰ろう、そう思って動こうとしたとき、袖をぐっと引っ張られて、隣の人の方へ無理矢理向かされた。

「なんで逃げようとするんだ」
「ご、ごめんなさい!」

低い声が聞こえて慌てて下を向いてでた答えがごめんなさい、だった。とても怖くて震えているのが声で相手にも伝わったと思う。

「あー…驚かすつもりはなかった、すまない」

相手はそういうと袖から手を放して、何回かあやまった。本当に申し訳なさそうな声音だったので、相手を見ると、銀髪の青年が、眉を下げてこちらを見ていた。

「何か、私に用があったんですか」

まだ声は震えてしまっていたが、青年は少し笑って答えた。

「いつもここにいるお前が気になって、いつか話そうと思ってたところだった」
「えっ、じゃあいつも来てた方はあなただったのですね?」
「そうなるな」
「話とは何かあるんですか?」
「いや、特には。直接目を見て話してみたいって思っただけだよ」
「それはどういう…?」
「それを言わせるのか?」

そうというなりぐっと体をこちらに寄せてきた。こちらを見据えたままの目が近づいてきたかと思うと、彼は引き下がって言った。

「えっと、名前、聞いて無かったよな」
「は、はい、名前と申します」
「俺は清正、加藤清正」

名前を忘れないようにと何度も心の中で繰り返していると、彼はまたこちらを見つめていた。なんでそんなに真剣にこちらを見るのか分からないけれど、なんだか恥ずかしくてそっぽを向いてしまうと、後ろから少し笑う声がしてきた。なにがあったのかと思っていると、笑い声のあとでこう聞こえてきた。

「お前ってそんな顔もするのか」
「あんなことされれば誰だって恥ずかしいですよ!」
「でももうこんなに打ち解けてくれたなら俺としては嬉しいな」

「これからもよろしくな、名前」
130216 for 相良さん
すごく遅くなってすみませんでした…!
リクエストありがとうございました!
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