「いた、孫市」

孫市が、仕事もないしのんびり過ごそうとしていたところ、後ろから声を掛けられた。振り返ると、そこにはそれなりに綺麗な着物を着た少女が立っていた。彼女は急に孫市の腕を引っ張って人気の少ない路地裏へと向かう。それから彼女は手を離した。

「おいおい随分と強引だなァ、姫さんよ」
「あんまり大きい声出さないで。あと姫って呼ばないでって言ってるでしょう」
「はいはい、嬢ちゃん」
「まぁ、いいけど」

彼女は改めて孫市の方に振り返ると、握っていた拳をぎゅっと握りしめた。彼女は最初に、唐突なことを言うけど笑わないでよ、と言って続けた。

「私に銃の使い方を教えて欲しいの」
「…はァ?」
「ね、良いでしょ?」

まるで拒否することは許さない。そんな顔をしていたので、孫市はうなずくことしかできなかった。


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銃が放たれた音がこだまする。名前は孫市から貸してもらった銃をおぼつかない手でにぎっていた。孫市は名前のうしろに立って手の置き場が違うだの、もっと的を狙えだのと言った。

「そこそこ撃ててるんだからそこまで言わなくても良いんじゃないの」
「いや、一つ一つの動作を確かめて覚えていかないとな。遊びじゃねぇんだ」
「ふーん…」

名前がそろそろ飽きてしまって、構えていた銃を下ろそうとしたとき、とっさに孫市が後ろから名前を抱きしめるようにして名前に銃を構えさせた。

「な、いきなり何なの」
「最後に一回撃ってみろ」
「は?」
「いいから、撃ってみろ」

孫市に言われるがままに、名前はゆっくりと引き金に手をかけた。そして一回深呼吸をして、引き金を引いた。すると大きな音がなり、孫市は名前から手を放した。

「何か意味でもあるの?」
「ああ、あるさ。これで名前が武器を使うことが最後になるようにっていう、な」
「何それ、かっこよく決めたつもり?」
「そうでも言わないとお前は分かってくれないだろ?」
「…ありがとう、孫市」
120422 forとっこちゃん
孫市が迷子ですすみません、、
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