誰かが部屋に入ってくる音がして、凌統は目をあけた。どうやら自分の寝室らしく、起き上がろうとしても体がだるくて動かせない。

「また派手にやってきたね、凌統」

声の主を見ると、それは好きな彼女の姿だった。部屋に差し込む月の光で表情はよく分からないが、それが確かに彼女であることははっきりと分かった。

「俺、何かやったっけ」
「敵陣に突っ込んでってやられたって聞いたよ」
「ふーん…俺らしくないねぇ」
「…人が…」
「ん?」
「人が心配してるのになんでそんなへらへらしてるの…!」

彼女はいきなり怒り出してしまった。訳が分からない。これは心配してくれてるのか?

「凌統なんか、一回死んで生き返れば良いんだ馬鹿!」

凄まじい音がして、彼女を見ると、見舞いに持ってきたのであろう果実を思いっきり近くの机に叩きつけていた。そして、さらに、続けた。

「これ食べて、早く元気にならないと許さないから!」

彼女はさっさと帰ってしまった。凌統は訳が分からずぽかんとしている。近くの机では、いろんな果実の汁やら破片が飛び散っていて、とても食べたいとは思えなかった。それでも、目をこらして見ると、どれも凌統が好むものであった。彼女らしい見舞いの仕方だ。凌統は苦笑して、その破片を口にした。
110616