※流血表現があります






「お前に武器は必要ない。武器を持つのは俺たちだけで充分だ」

あの時、清正にそう言われたのを覚えている。あの時は大きかった武器を震える手で持ち、おねね様と毎日特訓をしていた。少し年上だった、清正や正則、三成たちに近づけるように。強くなって同じ戦場に立つことが出来るように。
でも、強くなった私にかけられた言葉はあのような言葉ばかりだった。それからは、もう二度と彼らと関わりを持たないように避け続けた。それでも、私は強くなることを止めなかった。


「そこにいるのは名前か?」

ちょうど聞きたくなかった声が聞こえて、私は聞いていないふりをした。だが足音は近づいてきて、ついに私の後ろまで来てしまった。そこで私は武器の刃先を彼に向けた。

「おい、何の真似だ、武器下ろせよ」
「今とても苛々している、用が無いなら帰れ」
「久しぶりに会えたと思えばこれか…」
「…誰のせいだと」
「まだお前はそんなこと引きずってんのか、馬鹿」
「いいから、出ていけ」

清正が少し悲しげな目をしたので、思わず武器を持つ手が緩んだ。それを見逃さなかった清正は、武器の刃の部分を握って取り上げようとした。もちろん、彼の手からは血がボタボタと流れ落ちる。

「何やってんだよ!」
「いいや、離さない。今まで苦労してきたお前の方がもっと辛かっただろ」
「そんな、綺麗事ばっかり…!」
「勘違いさせて、悪かったな」

地面に血が染み込んで、染みを作る。そこに、名前が持っていた武器が落ちた。そして、名前がへなへなと座り込んだ。武器はもう赤色になってしまっていたので、もう使い物にならないだろう。清正は、彼女の目線に合わせるように屈んだ。それから、彼女の手を取った。

「人を殺してきた手はお前のように綺麗じゃない、そうだろ」
「それより血が、」
「人を殺してきた奴はお前とは帰る場所が違う」

清正はそこでニヤリという顔をした。今まで見たことのない顔だった。それから血の出ている手でぐっと拳を作り、握りしめた。名前はとっさに目を背けた。でも、耳には血液の飛び散る嫌な音が響く。

「どうしても武器を持つことを選ぶなら、俺はどうなっても知らない」
「……」
「お前には平和に生きていて欲しいだけだ」
「もうやめろ、手が…!」
「選べよ、名前。もし武器を取るならこの先どうなるか教えてやる」
120213