「清正、これどう思う?」
「…ああ」
「おねね様にやってもらったんだけれど」
「…ああ、そうか」
「ふーん…」

廊下を歩いていると、ちょうど清正と出くわした。挨拶を交わして、先ほどおねね様に髪をいじってもらっただとか、着物もお古だが綺麗なものをもらって着せてもらっただとかを自慢したのに、清正はぼんやりと私の頭の上を見るだけだ。私は女の子の中でも長身の類に入るのに、目の前の清正はもっと背が高い。だから背伸びをしても彼の目線には届かなかった。

「清正、今日何かあったの?」
「いや、特には」
「あるでしょう、私と目を合わそうとしてくれないし」
「…名前、動くな」
「えっ?」

急に強張った声になったので、私は両手を上げて固まった。
すると、清正は少し屈んで私の髪へと手を伸ばした。

「こうすると、もっと良くなる」

何か飾りを付けられた気がしたけれど、自分では分からない。慌ててその場所に手を持っていこうとしたら、清正がその手を掴んだ。

「せめて今日だけでも、そのままにしておいてくれないか」
「でも、どんな飾りか気になるよ」
「いや、今はまだ知らなくて良い。明日にでも教えてやるよ」
「えー…」
「あと誰にもらったとか聞かれても答えるなよ」
「何で?」
「そ、そういうのは、俺達ふたりだけの秘密にしておいて欲しい」
「それってどういう―…!」

清正は、私の言葉を聞かなかった振りをして、どこかに行ってしまった。その時の、赤くなった顔が脳裏から離れない。残された私は、またその場所に手を持っていこうとしたけれど、止めておいた。その時飾りが揺れて、しゃらんと綺麗な音がした。
111022